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写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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<   2008年 04月 ( 10 )   > この月の画像一覧

チエ

彼女がチエと名乗ったので、僕たちは付き合うことになった。

チエはとても優しい子だ。僕はチエが好きだし、チエも僕を好きだと思う。何も問題はないのだけれど、彼女はマッハ3だった。

マッハ3というのは、音より速いのだ。具体的に言うと、音の三倍の速さだ。以前、浜辺で追いかけっこをした時は大変だった。

「うふふ、つかまえてごらんなさい」
「あはは、絶対無理」

そのまま彼女は南米にまで到達してしまったので、しかたがないから飛行機で後を追った。出費も手間もかかったけど、現地に到着して彼女の笑顔を見たら、そんな苦労も吹き飛んでしまった。

子供のころ、障害があればあるほど恋は燃えあがるという言い伝えを聞いた。

マッハ3でぶつかると、相手は死ぬ。チエはすごいから無傷。町中では音速の壁を突破しないように気をつけているらしいけど、たまにやってしまう。そんな少しドジなところも、たまらなくかわいい。

チエはとても優しい子だ。僕はチエが好きだし、チエも僕を好きだと思う。何も問題はない。

「いや、あるね」

声をかけてきたのは、買い物帰りのケンジだった。

「チエを賭けて、俺と勝負しろ」
「何故?」
「俺もチエが好きだからだ」
「お前、なにをいまさら……」
「タイミングを、見計らっていたのさ!」

何のタイミングかは分からないが、とにかくピンチだ。ケンジは確か、時速500キロだ。僕では勝てない。

「大体、おかしいでしょ。僕が勝手にチエを賭けて勝負しても、彼女の気持ちが動かないことには……」
「正論はいい。いくぞ!」

まさか正論の価値をこんな形で否定されるとは思わなかった。ケンジはクラウチングスタートの体勢をとった。まずい。やられる。

「私の為に争わないで!」

声がした。一陣の風が舞い、衝撃音が耳に響く。先ほどまでケンジがいた場所に、チエが立っていた。

「チエ……」
「ススム……」

よく見ると、チエの足元には血だまりが出来ている。おそらく、ケンジは死んだのだろう。

「ススム、私怖かったよ!」
「うん、僕も怖かった」

僕らは抱き合った。夕日が照らす街の影に、僕たちはいる。
by rei_ayakawa | 2008-04-30 14:11 | 空想
「なんかこの曲っていいよねー。いや、死刑って感じ」
「そうかな? あんまり癒されないけど」
「だろうね」
by rei_ayakawa | 2008-04-27 18:39 | 空想

現代版

「ゴホゴホ」

「おや、風邪ひいたん?」

「……な、何故わかった!!」

「へ? いや、だって咳しとるし」

「すごい推理だ! 天才だ! 名探偵だ!」

「え、いや、あの」

「何も言うな! 俺がワトソン。お前がホームズだ!」

「わ、わかった!」

「わかってくれたか! さすが名探偵だ! 凄えな!」
by rei_ayakawa | 2008-04-23 22:32 | 空想

いたずら小僧

「もう! この子は何でいたずらばっかりするのかしら!」
「落ち着いてください、ママ。冷静かつ平和的に話し合いましょう」
「おしおきよ!」
「暴力は憎しみしか生まない。およしなさい」

ママの平手打ちがヒロシを襲う。襲ってきた以上、自分の身を守らなくてはならない。母に手を上げるのはとても辛いことであったが、ことここに及んではどうしようもない。

(真の達人とは、争いが発生する以前にそれを食い止められる者のことだと聞く。……俺はまだまだだな)

ヒロシは己の未熟を呪いながら、平手を左腕ではじき返し、右の正拳をママの腹部に叩き込んだ。崩れ落ちるママ。涙を流すヒロシ。

「くっ、すまぬ……。俺が未熟なばかりに!」

夕日がヒロシの頬を照らすのであった。
by rei_ayakawa | 2008-04-19 18:34 | 空想

ボブ

「ここはどこですか?」
「ここはボブです」

ボブらしい。聞いたことのない地名だ。どうやら、知らぬ間にずいぶん遠いところまでやってきてしまったようである。去り行くおじさんの後姿を見ながら、私は考えていた。『ボブ』ってどういう漢字で書くのだろうか。母部?

なにはともあれ、帰らなければならない。緑葉の隙間から射し込む日の光が、路面を照らしている。駅にたどり着くには、どちらへ向かえばいいのだろうか。おじさんにもう一度聞いてみようと、その後姿を追った。

「すみませーん、ちょっと……」
「あああああああああ!」

おじさんがいきなり絶叫をあげると、彼の背負ったバックパックからジェットが噴出し、おじさんを天高く運んで、私は呆然として、おじさんの姿が見えなくなって、私は「なんで?」と呟いて、駅までの道はわからないし、看板もないし、もうどうしたらいいのかさっぱりわからなくて、膝を突いて落ち込んでいたら、おじさんがゆっくりと空から降りてきて、着陸成功。

「おや、あなたでしたか。いきなり後ろから話しかけられたから、通り魔に殺されるかと思ってしまいましたよ」
「さっき話しかけたときは大丈夫だったじゃないですか!」
「いや、あれは側面からでしたから。ははは」

世の中にはいろんな人がいるんだ。生きることは大変なんだ。とにかく、そういうことはわかった。勉強になった。

「え、えっと、それはいいんですけど、ちょっとお聞きしたいことがありまして」
「どうぞどうぞ、私はこの辺のことには詳しいですからね。なんでもお聞きください」
「ありがとうございます。駅はどこですか?」
「駅はボブです」
by rei_ayakawa | 2008-04-16 07:21 | 空想

運命的カップル

「天井と天丼の違いについて真剣に考察しようと思う」
「へぇ」

一応彼の立場はマイ・ラバーということになっているのだけれど、本当にそれでいいのだろうかと思うときもある。たとえば、今みたいな状況に直面したとき。

「天井と天丼は非常に似ている。違いは『井』の文字の中央に点があるかないかだけ。一見そう思ってしまうわけだが……」
「うん」
「しかし、本当にそうだろうか?」
「違うっしょ」
「君は頭がいいな」
「それほどでも」
「まず、『天丼』は出前で取れるが、『天井』は出前で取れない。これは大きな違いだ。『天丼』が必要なときは電話一本で取り寄せられるのに、『天井』が必要なときに電話をかけてもすぐに持ってきてはくれないのだ!」

何でこいつと付き合ってるんだろう?

疑問に思った回数は数知れない。本人は自分のことを「真実を追い求める求道者」とかほざいてるけど、ただの馬鹿という説がわたしの中では有力だ。

「さて、次に」
「もういいよ」
「何故?」
「興味ないもん」
「無気力な若者の典型だなぁ」
「そんなところに気力使いたくないよ」

彼は「ふん」と鼻を鳴らし、口元に手を当てて考え込むような体勢に入ってしまった。黙っていれば結構かっこいい。知性的にも見える。こういう姿を見るたびに、神様は残酷なことをなさったと思う。

「待て、今大変なことに気がついたぞ!」

急に彼が声を上げた。

「『天丼』は食えるが、『天井』は食えない!」

つ、疲れる……。

「その発見についてわたしはなんてコメントしたらいいと思う?」
「褒めていいよ」
「すごいね」
「サンキュ」

別に顔に釣られたつもりはないんだけどなぁ。

もちろん、顔以外にいいところが無ければとっくに別れているんだけれども、それらの美点が欠点を凌駕しているかと聞かれたらなかなか難しいところだと思う。今だって、「この研究成果を学会に発表するべきだろうか?」って真剣な顔で聞いてきてるし。どうするよ、こいつ。

「しかし、論文にまとめるとなるとめんどくせぇしなぁ。うーむ、迷うところだ」

それなのに、不思議と別れようって気も起きない。なんでだろ?これこそまさに『運命の相手』という見方もできなくは無いけど、認めるのはかなり癪だ。

まぁ、流されすぎるのも良くない。ここは一つビシッと言っておかないと。

「ていうかさ、もうちょっと高尚な話をしようよ。くだらなすぎるんだよね、考えることが」
「高尚な話ってなにさ」
「たとえば、『冤罪』と『変態』は何故似ているのかについての考察とか」
by rei_ayakawa | 2008-04-13 21:31 | 空想

千手観音像型置時計

千手観音が!
千手観音が!
千手観音が!
迫ってくる!

声を上げて!
声を上げて!
声を上げて!
迫ってくる!

「腕が邪魔! 腕が邪魔! 腕が邪魔! 腕が邪魔! 腕が邪魔! 腕が邪魔!」

うわああああ……!
by rei_ayakawa | 2008-04-11 00:39 | 空想

春爛漫

その男は、旅先で桜吹雪に遭遇し、凍死しました。
その男は、生前、事あるごとに云っていたそうです。
「俺が死んだら、残念だ」
実に残念なことでした。

その男は、頭の中が常に春爛漫でした。
その男に、ふさわしい最後だったのかもしれません。
その男は、常に一人で昼食を食べていました。
いくら春とはいえ、凍死もするでしょう。

その男は、サトシくんによく云っていました。
「お前の股間は、俺が見た時いつも隆起しているな」
嫌がらせのつもりは無かったそうです。

その男は、ユカリちゃんによく云っていました。
「おっぱいボーン! ボーン!」
裁判にまで発展しました。

云ってしまいました。
「なんでどいつもこいつも大学生の癖にこんなガキっぽいわけ?」
その男ほどではありませんでした。

希望する進路は公務員。
「やっぱり、堅実に生きないとね」
趣味はネットゲーム。
「恋愛シミュレーションなんかするやつは人間終わってるよ」
縦笛は舐める物という固定観念がある。
「ポリシーは、ポリシーを持たないことかな」
何故かむやみやたらと人の話に割り込む。
「相手を敬うことが、一番大事なのさ。恋愛ってのはね」
いつも何かにおびえていた。
 
その男の話は、ここでおしまい。
by rei_ayakawa | 2008-04-08 01:34 | 空想

バス

なぜかはわからないが、バスで乗り合わせた乗客が全員ハゲていた。

バスは満席。僕を含め、立っている乗客も複数いる。そして全員ハゲている。運転手は帽子を被っているが、後頭部の様子から考えて十中八九こいつもハゲだ。

別にハゲが悪いこととは思わない。僕自身もハゲの家系であるし、自分がハゲたらヅラなんか被らないで男らしく振舞おうと今から決めている。しかし、日本のハゲ人口はここまでの密度を誇っていたのであろうか。世界に誇れるハゲ大国日本だ。

いや、しかし、いくらなんでもこれはおかしい。老若男女問わずにハゲだ。おそらく、大半が剃っている。スキンヘッドが最近の流行なのであろうか。

僕の目前に座っている親子らしき二人。なにも、母娘そろってスキンにすることはないだろう。見た感じ、母親はまだ20代、娘は4,5歳といったところである。そんなに髪が嫌いか。髪が憎いか。

もうちょっと貴様ら、髪を敬え。

実に仲間はずれにされた気分である。何も悪いことはしていないはずなのに、そわそわして落ち着かない。みんなが僕を見ている気がする。なんでこいつはハゲじゃないんだ。無駄毛にまみれやがって。そんな風に思われているのではないか。

この場で自分の頭を丸めたい衝動に駆られたが、残念ながら手元にバリカンはなかった。よしんばあったとしても、さすがに公共の場で無駄毛処理はできない。

時計を見てみると、まだ乗車してから3分しか経っていなかった。時間の経過をここまで遅く感じるのは、乗客が全員ヒゲだったとき以来だ。

ハゲとヒゲ。一文字違いだが、両者の意味するところは大きく違う。かたや毛にまみれ、かたや毛がない。ハ行を一段下にずらすだけでここまでの違いが出るのだから、日本語は恐ろしい。もはやこれは哲学の粋ではないのか。哲学がどういうものなのか詳しく知っているわけではないのだが、なんとなくどことなくそんな気がしないでもない。

目的地まで大体15分ほどかかるので、僕はこの状況に後12分耐えねばならない。勘弁してほしい。途中で降りてしまおうか、本気で迷う。しかし、降りたらほぼ確実に遅刻する。それは避けねばならない。遅刻するわけには行かない状況なんだよ、こっちだって!

なんか時間が経つにつれ、全員ヤクザに見えてきた。これはヤクザの修学旅行か。疲れる。ああ、疲れる。立っているだけなのに、どうしてこんなに疲れるのであろうか。全員ハゲだからに決まっている。

当たり前の事実を自分の頭の中で確認し、僕はその場に座り込みたくなった。
by rei_ayakawa | 2008-04-04 23:54 | 空想
今日は風が強かった。

強風により電車のダイヤも乱れて、自宅まで帰り着くのに普段以上の時間がかかってしまった。しかし、私がいつも以上に疲労しているのは、決してそのせいだけではない。

私が普段のように「座りたい超座りたいめがっさ座りたいけど座れないだって男の子だもん」という熱い思いを抱えてつり革を握り締めていると、私の横に立っていた女性がいきなり声を上げた。

「この人、士官です!」

誰がだ?

仮にその人が士官だとして、それが今この状況で何を意味するのであろうか。私にはさっぱりわからなかったが、そのかわり大変なことに気がついた。

彼女が捕まえていたのは、私の腕であった。

周りの乗客がざわめきだす。私は必死で否定した。

「馬鹿な!私は士官などではありません!」

「嘘つかないでよ!この士官!」

彼女が何を勘違いしているのかわからないが、私は武官でも将校でもない。ゆえに士官と呼ばれるいわれは全くないのだが、悲しいことにこの世の中、声の大きいほうが勝つケースが圧倒的に多い。まずい、このままでは私が士官にされてしまう。私は焦った。

「私が士官であるという証拠でもあるのですか!」

「この手が何よりの証拠よ!」

彼女はつかまえた私の腕をさらに天高く掲げた。意味がわからない。それの何が証拠になるのか。そう思っていると、周りの乗客たちが露骨にざわめきだした。

「士官だ。こいつは士官だぞ」

「ああ、見事なまでの士官だ」

「あの手がすべてを物語っているな」

私は士官ではない。しかし、これだけ大勢の人間が私を士官だといっていることは、私は士官なのかもしれない。私の手は士官の手だったのかもしれない。士官の手ってなんだよ。

「士官だ」

「士官だ」

「土管だ」

「士官だ」

私は士官なのか、土管なのか……。

「なーんてねっ」

女が明るく微笑んだ。私の手は開放された。

「エイプリル・フールだよ。ひっかかった?」

何を言っているのか。エイプリル・フール。今日は4月1日か。くそっ、なんてことだ。危うく自分が士官であるなどというばかげた話を信じかけた。

周りの乗客に目を向けると、みんな顔が下を向いていた。





というようなことがあったのだ。

いやはや、全く持って今日は災難であったことよ。
by rei_ayakawa | 2008-04-01 19:56 | 日々