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写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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トイレット

まずい、トイレはどこだ。

私は焦っていた。それはもう著しく焦っていた。まさかトイレを取り逃がすとは思わなかった。このままでは、漏れる。

「おーい、トイレ。どこへ隠れたんだい。でておいでー」

近くの茂みに頭を突っ込んで呼んでみたが、応答はない。代わりに、私の腹からおどろおどろしい返事が聞こえた。お前はいい。お前はしなくていいんだ。緊迫した状況である。もはや一刻の猶予もない。下手に動くとドカンと行く可能性があるので、必死であたりを見回してトイレの影を探した。無駄に広いぞ、この公園。

突然の便意を感じ、慌てて近くの公園に駆け込んだまではよかった。トイレも入り口近くにあった。私は猛然とダッシュしたつもりだったが、人間におのずから備わっている防衛本能が働いたのであろう。ひよこのような走り方にしかならなかった。自分で見ることができたわけではないが、おそらく形相は必死。あまりにも常軌を逸した光景に恐れをなすのも無理はないと言える。トイレは逃げた。逃げてしまった。

完全に想定外の状況であるが、こうした時こそ窮地を脱するための冷静さが必要である。現状を整理してみよう。周りを見渡しても、トイレは見つからない。下手に動けば漏れる。じっとしていても、後僅かの時間経過で漏れる。冷静に考えた結果、漏らすしかないという結論に至った。死のうか。

いや、それはいけない。自殺はよくない。自殺なんて、弱い人間のやることだ。いいじゃないか、漏らしても。命はかけがえのない大切なもの。死ぬくらいなら漏らそう。私は叫んだ。

「死ぬくらいなら漏らそう!」

ベンチで寝ていたホームレスが、驚き飛び起き叫んで言った。

「死ぬくらいなら漏らそう!」

砂場で遊ぶ子供たちも、頷きながら言った。

「当たり前じゃん!」
「死ぬくらいなら!」
「漏らそう!」

子供たちの母親と思しき主婦たちも、私を見つめて言った。

「死ぬくらいなら漏らすべきだわ」
「そうよ、なにも死ぬことはないわ」
「死ぬくらいなら漏らしましょう」

ああ、やっぱりみんなそう思っているのか。私は安心した。後しばらくで漏らすだろう。それでも私は安心だ。あと数瞬で漏らすだろう。それでも私は安心だ。

なぜなら、命は尊いのだから!
by rei_ayakawa | 2008-06-25 22:28 | 空想