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写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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すないぱあ

「あいつが『すないぱあ』か?」
「おう、あいつが『すないぱあ』だ」

夕暮れの街。
工場の煙突は赤い空にシルエットを垂れ流しているし、土手の上で踊る『すないぱあ』はノリノリだ。

「まさか、こんなところで『すないぱあ』に出会うとはな……」
「ああ、これが戦場の緊張感というやつか……油断するなよ」

僕たちは土手の下の草むらに身を伏せて、その様子をうかがう。

「くっそぅ。なんて見事な踊りなんだ。うかつに出ていけないな」
「ああ、出ていけば……大変なことになるぜ」

『すないぱあ』は相変わらずノリにノッている。
表情は逆光で見えない。
STEP TO STEP.
DANCE TO DANCE.
MISO TO SIO.
DOCHILA GA KONOMIKA.
僕はあることに気がついて、思わず声を上げた。

「あっ!」
「おい、静かにしろよ。気づかれるぞ」
「わ、悪い」

『すないぱあ』は踊り続けていて、こちらに気づいた様子はない。

「どうしたんだ?」
「そ、それが……思い出したんだ」
「なにを?」
「お前に貸した500円……確かまだ」
「それ以上言うな!」

彼は声を張り上げて立ち上がった。

立ち上がってしまった。

次の瞬間、彼にスポットライトがあたり、太陽がミラーボールになって、軽快な音楽が鳴り始めた。
彼は『すないぱあ』に見つかってしまったのだ。
もう助けられない。
彼は「ディスコ! ディスコ!」と叫んで踊りだした。
ノリノリだった。

僕は「ディスコは古い!」と叫びたかったが、まだ近くに『すないぱあ』がいるかもしれない。
とてもそんなことはできなかった。
by rei_ayakawa | 2008-02-25 20:31 | 空想