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写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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宇宙のどこかの片隅で。

宇宙のどこかの片隅で。
また一つの星が生まれた。
様々な星が輝きを放つ、きらびやかな世界に。
しかし、お互いの距離はあまりにも遠い。


「人間は結局、最終的には孤独なのかもしれない。他人と心が通じ合ったなどと感じても、それが本当かは分からない。自分が自分である以上、自分の視点を通してしか世界を見る事は出来ないのだから。人生とは主観的なものでしかありえないんだ」
「お前、独り言多いな」
「そうか?」

ふと、足元を見ると蟻の行列が目に入った。彼らは自分たちの巣穴に向かって、せっせと行進を続けている。わき目も振らず働く彼らに、私は少なからず共感を覚える。私はさっき買ったばかりの「十六茶」の蓋を開けながら、巣穴の上に屈み込んだ。

「あの子の腹筋いいよなぁ。一目惚れだよ」
「腹筋……?」
「輝く笑顔、引き締まった腹筋。これ以上素晴らしいものがこの世にあるかい?でも、いきなり声かけたら変なやつだと思われるかな。俺ってシャイだからなぁ」
「いや、その……」


光を発する星がある。
受けて輝く星もある。
孤独の中の、断ち切れない関係性。
彼らは何を思うのだろうか。


「つまりさ、私が思うにあのエンディングはどーしても納得いかないのよ。だって、どう考えてもあそこで出てくるべきなのは納豆じゃなくて鯖の味噌煮でしょ?あの流れでどうして納豆を出す気になったのか知りたいよ。ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ」
「……ありがとう」

海外へ渡った野球選手の活躍が新聞で報じられていた。TVをつけてもその話題一色。どうやら、なにかの新記録を打ち立てたらしい。思えば、今ではカリスマ演歌歌手な私も、昔は野球少年だった。4番でエースだった金田君、同じクラスの女子の笛を全てなめて見せたキャッチャーの田中君、野球は下手だがアゴがエベレストだった9番ライトの川口君。皆、今頃どうしているのだろうか。

「最近寒いからね。これ、あげる」
「そいやぁ!」
彼女が差し出した手編みのマフラーを、僕は力の限り引きちぎった。
「ありがとう!体が温まったよ!」


宇宙のどこかの片隅で。
また一つの星が生命を終えた。
それでも全ては変わることなく、ただただ時を刻み続ける。


勇敢な一人の騎士がいた。彼は正義と友情を重んじる高潔な人物で、辺境の蛮族たちから自分の国を守るために戦った。戦いを重ねるうちに剣は折れ、鎧は砕け、その身に多くの傷を負っても、彼は自分の信じるもののために戦い続けた。だが、返り血にまみれたその姿は、もはや蛮族たちと見分けがつかない。そして、力尽きた彼は戦場で孤独に死んだ。流れ星が見えた。

「あの子の尾骶骨いいよなぁ」
「尾骶骨!?」

「ねーねー、あの人の人差し指第二関節ステキだと思わない?」
「人差し指第二関節!?」


宇宙のどこかの片隅で。
また一つの星が生まれた。
by rei_ayakawa | 2005-12-10 18:03 | 空想