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写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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ホームで電車を待っていると、隣のおっさんが「荒ぶる魂!」と叫んだ。

ほほう、荒ぶっているのであるか。
魂が荒ぶっているのであれば、公共の場で唐突に叫び声をあげたくなるのも致し方ない。
俺はあんたを責めないよ。
なんだか優しい気持ちになった。

引き続きホームで電車を待っていると、隣のおっさんが「スピニングダンス!」と叫んだ。

何事かと思い視線を向けたら、おっさんがその場でひたすらクルクルと回り続けているだけだった。
スイカでも割る気なんだろうか。
これをダンスと認めるには、俺はあまりにも若すぎる。

未熟。
未熟だ。

カサカサという音が聞こえた。
カブトムシが這うようなあの音。
そういえばスイカを餌に与えた記憶がある。
いい加減昔のことなので、よく覚えてはいないが。

引き続きホームで電車を待っていると、隣のおっさんが「フライングバタフライ!」と叫んで線路に舞い降りた。

「おいおいミンチになるぞ」と思ったが、そんなことよりカサカサうるさい。
耳を澄ませて音の出所を探ると、どうやら耳の奥から聞こえてきているらしい。

カサカサ、カサカサ。
音はやまない。
どこからか「ブレイクザウォールダウン!」という声が聞こえてきたような気もしたが、そんなこと気にしている余裕はない。

引き続きホームで待ち続けている。
電車はまだこない。
# by rei_ayakawa | 2011-11-12 22:31 | 空想

オプティミズ村への招待

オプティミズ村は愉快な所。
オプティミズ村はシュールな所。
オプティミズ村はファンキーな所で、
オプティミズ村はグレイトな所。

どうぞ。
# by rei_ayakawa | 2009-01-06 21:24 | 空想
「ほっほっほ。今日も世界中の良い子のみんなにプレゼントを届けに行くのじゃ。トナカイ、ほれ、急いで飛んでおくれ」
「僕になんか期待しないでくださいよ。どうせ、僕は赤い鼻ですよ」
「何を拗ねておる。おお、そうか。またみんなに何か云われたのじゃな。気にすることはないぞ。暗い夜道では、ピカピカのお前の鼻が役に立つのさ」
「サンタさん! それは本気で言っているのですか?」
「おお、もちろんじゃ」

「嗚呼! それはなんたることでしょう! サンタさん、落ち着いてください。いくら僕の鼻が赤くてピカピカだと云っても、暗い夜道において、ヘッドライトの役割を果たしてくれるほどピカピカであるはずがありましょうか! 確かに、相手から見えやすくなる程度の意味合いはそこにあるかもしれませんが、我々の行く先を照らしてくれるなどという神々しき恩恵は全くと言っていいほど期待できません。さらに、我々が行くのは空。空なのです。対向車の心配はありませんし、すれ違うのは飛行機だけ。搭乗員が僕の鼻の輝きを認識するころには、すでに僕とサンタさんは地上へと向かって華麗なる墜落を遂げてしまっているはずなのです! ああ、サンタさん。それでもなおかつあなたは、僕のこの忌まわしき鼻が役に立つとおっしゃることができますか?」

「あ、えーと、その」
「だとしたら、あなたは既に正常な判断力を失っています! 子供たちにプレゼントを配っている場合ではなく、一刻も早く我々は空から降りて、あなたの操縦ミスによる事故を阻止するために動かねばなりません。サンタさん、僕は一時の慰めなどよりも、確実な任務の遂行を望むのです!」

「ああ、ごめん、わかったよ。さすがに役に立つとは云えんわな。うん」
「ですよねー。だから、僕に何か期待しないでくださいよ」
「拗ねるなよう。しかしじゃな。今のやり取りで、お前が非常に高度な論理的思考能力を持っており、いざ仕事となるとそれを存分に発揮できる偉大さをも備えていることを確認できたぞい。やはり、お前は頼りになるやつじゃよ」
「でも、鼻は赤い! 嗚呼!」
# by rei_ayakawa | 2008-12-24 19:58 | 空想

突き指 後日談

 前記事のコメント欄で、「病院は面倒くさいので行きたくありません。一年後にまだ完治していなかったら行きます」と豪語した私。あれから一週間ほど経ち、指の腫れがほぼ完全に収まったにもかかわらず、関節部分だけ痛くて曲がらないという異常事態を前に、あっさりと前言を翻して、病院へと赴いたのであった。一体どうなってしまうのか?

 さわやかな日差しの降り注ぐ、平日の午前中。診療時間の始まりとともに、病院に到着した私。待合室に足を踏み入れてようやく、病院というものは混んでいるものなのだ、ということを思い出す。久しぶりすぎて忘れていた。もうちょっと早く来ればよかったのだ。これが女子高生の群だったらどれほど目の保養になることかわからないが、ひしめいているのは人生の大先輩方ばかりである。いきなり意気が挫け、もう帰ろうかどうしようかと五分くらい悩んだ。待つのは面倒くさいが、再び来るのはさらに面倒くさい。諦める以外に道はなかった。

 さて、問題はこの膨大と思われる待ち時間をいかに過ごすかである。残念なことに、暇つぶしに適したものはこれといって持ってきていない。妄想力を存分に発揮して暇を潰すほかないか。椅子に座り、「好きなあの子と道端でばったり会っちゃった時の対処マニュアル」でも作成しようと、メモ帳とペンをカバンから取り出したその時、思いもかけぬものを前方に発見した。

 本棚の中に、本がある。

 そうか、思い出した。病院には本があるのだ。私は小学生の頃、慢性的な鼻炎に苦しまされていて、しょっちゅう耳鼻科の厄介になった。その時にも、待合室に置かれていたマンガで時間を潰していたのだ。それ以来ほとんど病院を利用しなくなって、待合室のマンガといえば完全に床屋のイメージになってしまっていた。いやはや、病院から遠ざかるというのも困りものである。まあ、こればかりは健康の証拠だし、仕方のないことなのだ。でも、歯医者は去年行ったか。置いてあったな、マンガ。いやあ、うっかりうっかり。

 なにはともあれ、これなら暇つぶしは容易である。『ゴルゴ13』面白いなあ。「アヤカワさーん」そろそろクライマックスか。「アヤカワさーん」ちょっと待て、今いいところなんだ。「アヤカワさーん」待てというに。

 気がつけば、30分近くもの時間が過ぎていることに愕然とした。何たるトラップ。断腸の思いで立ち上がり、マンガを本棚に突っ込んで、診察室に向かう。泣くな、私。清算待ちの時にまた読める。

「とりあえずレントゲンを撮ってみましょうね」と、見目麗しい看護士さんに微笑まれた時点で、満足した私はもう帰ってもいいかなと思ったのだが、何もそんなアナーキーな行動を進んで取ることもないだろうと思いなおして、素直に従うことにした。

「えーと、完全に骨がぐちゃっていってますね」

 ぐちゃって。

 そんな形容するなよ。ぐちゃって、なあ、ドクター。

 レントゲン写真を見つめながら、そんな思いを抱く私。先週書いた記事の書き出しは「幸運なことに、私はこれまでの人生で大きな怪我をしたことがない」というものだったのだが、あれを書いた時点で既に大きな怪我をしていたことになる。幸運でも何でもない。ごくごく普通の一般ピーポーだったのだ、私は。皆さんをだますような文を書いてしまったことを、本当に申し訳なく思う。申し訳ない、申し訳ない。このくらいでいいかな。
 
 過ぎてしまったことを悔やんでも仕方がない。見るべきは未来である。私の胸は高鳴っていた。人生初骨折である。まさか、こんなにも早くチャンスが訪れようとは。もう、ゴルゴなどどうでもいい。さあ、私を紳士にしてくれたまえ、ドクター。

「とりあえず、固定して一週間ほど様子を見ましょう」

 なるほど。まずはギブスか。指示されるまま処置室に向かい、骨折している右手の小指にギブスを付けてもらう。お湯につけると軟らかくなるので、その状態で指に巻きつけ、冷水につけて一気に高質化させ装着完了。着脱式なので、普通に風呂にも入れるらしい。なかなか便利なものである。私の利き腕が左ということもあり、日常生活にたいして支障はなさそうだ。

「はい、今日はこれで終わりです」

 まて、松葉杖を忘れているだろう。松葉ステッキはどうした。

「待合室でお待ちください」

 マジで? ああ、会計の時にプレゼントというわけか。なかなか粋な演出だね。

「お会計は3055円です。ありがとうございました。お大事に」

 ありがとうございました!
# by rei_ayakawa | 2008-12-04 22:54 | 日々

突き指


 幸運なことに、私はこれまでの人生で大きな怪我をしたことがない。

 そもそも体を動かすという行為が嫌いなせいか、「鉄棒から落ちて骨折」みたいな小学校生活は微塵も送ることなく、そのままのテンションで生き抜いてきてしまった。まず、運動をしない。よしんばせざるを得ない状況になっても、どうにかして動く役割は他人に押し付けようとする。基本的に見ているのが私の仕事だ。故に、骨折どころかかすり傷を負うことすら珍しいのである。そして、不幸な事故に巻き込まれたりすることもなく年を重ね続けている。ここ最近の事例では、二年ほど前に包丁で指を切ったのがおそらく最新の怪我だったはずだ。

 そんな私が、久しぶりに怪我をしてしまった。柄にもなく、「これも庶民どもの生活を学ぶためだから」等と思い、バスケなんかやってしまったのがいけなかった。いや、ただの突き指だからお見舞い金とかわざわざ送っていただかなくてもいいのだが、もし送っていただけるという奇特な方がいたら、せっかくの好意を無碍にするのも問題なので、遠慮なく受け取らせていただくことにする。どうしてもお見舞い金を送りたい! という方は遠慮せずコメント欄にその旨を書き込んでいただきたい。ちなみに書き込むときは鍵コメントで、連絡先も一緒にお願いします。すぐにこちらからも、送金先を伝えますので。

 さて、突き指である。如何せん久しぶりだ。前に突き指をしたのは、一体いつ頃のことであったか。手の小指が中指と同じ太さになってしまうのは、見た目なかなかの衝撃である。さらに衝撃的だったのは、冷やすべきなのか温めるべきなのか本気で迷ってしまったことだ。こんな時こそ文明の利器である。携帯電話とはいいものだ。外にいながら、即座にネットができるというのがいい。さっそく「突き指」で検索して、冷やせばいいものだということを知った。また一つ勉強になった。こうした機会を無駄にせず、貪欲に知識を吸収していく精神性が、人を大きく成長させるのである。

 こうして私はまた一歩賢人の領域へと近づくことができ、幹部を水で冷やすことに成功したわけだが、そんなことは関係なしに指は膨れ上がり、なんだか青黒く変色し、とりあえずシップを貼って今に至るというわけだ。調べた限りでは、ただの突き指だと思って油断してはいけないらしい。場合によっては骨折している可能性もあるとか。

 骨折は紳士だ。

 昔から思っていた。骨折経験のある人というのは世の中に案外多いらしく、小学生だった時のクラスメイトにも松葉杖をついて学校に来ている人がいた。その姿、実に紳士であった。なにせ、杖である。ステッキである。ステッキというのは、実に紳士ではあるまいか。私は昔から英国の上流階級の生活に憧れる貴族的精神の持ち主だったので、とてもうらやましく思った。しかし、今の日本でステッキはあまりにも浮きすぎる。老人か盲人ならともかく、全身健康体の小学生がステッキを学校に持ってきたら冷ややかな視線を浴びせられてしまうだろう。骨折さえしていれば、そんなことにはならない。ならばしようか、とも思ったのだが、さすがに痛そうだ。痛いのは嫌だ。

 幸か不幸か、私はその後も骨折をせず松葉杖を持つ機会にも巡り合わなかった。それでも、あの頃の松葉杖に対する憧れは、いまだに私の心にくすぶっている。右手の小指にはシップが巻かれている。

 もし、この指が骨折していたら、私も紳士になれるのだろうか。
# by rei_ayakawa | 2008-11-27 22:18 | 日々