写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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飛行奇談

飛行場には夕焼けが訪れる。

Aさんは夕焼け色の世界で佇んでいる。赤という表現は真理から乖離している。

「彼女は誰を待っているんですか?」

僕はBさんに聞いてみた。

「AさんはCくんを待っているのさ」

話を聞くと、AさんとCさんは小学校を卒業するとともに離れ離れになってしまったらしい。その後二人は結婚したが、相変わらず離れ離れのままだった。今日、ようやく20年ぶりの再会を果たすことができるのだそうだ。

時を越えた繊維のストーリー。今日が彼女にとってそのように大切な日だったとは。

「それにしても、ずっと会っていないのによく結婚できましたね」
「どういう経緯でそうなったのかは俺にも分からん。男女の仲は不思議なものさ」
「男女の、中?」

確かに不思議だなぁ、と思った。

ぼーっと空を見つめていると、やがて雲の切れ間に機影が出現した。飛行機は見る見るうちに下降し、着地した場所はAさんからおよそ東京ドーム一個分の距離。そのまま鬼気迫るヘッドスライディングで爆発炎上した。

「セーフですかね?」
「いや、アウトじゃねぇの?」
「微妙なタイミングですよね。審判の判定はどうでしょうか」

炎上する残骸からはい出してくる影があった。Cさんだ。AさんはCさんの姿を確認すると、両手を拡げて駆け寄り(あの腕の形はセーフだ)そのまま抱きついた。Cさんはそれに応えるようにAさんの腰に手をまわし、口づけをする。

「あー、いいシーンですね。僕、涙出てきちゃいそうですよ」
「よかったな。ナイスガッツだった」

なにせ20年の月日に遮られていた夫婦なのだ。是非とも、これからは幸せに二人で暮らしてもらいたい。二人の愛情とCさんの白血球の働きが十分であれば、それも可能であろう。

二人の姿が救急車に吸い込まれた後、Bさんに声をかけた。

「僕たちはどうしましょうか?」
「そうだなぁ、この辺にいい居酒屋があるんだ。せっかくだから酔っていこう」
「いいですね」

僕はポップコーンの空箱をごみ箱に捨てて、先を行くBさんの後を追った。
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by rei_ayakawa | 2007-08-31 14:43 | 空想

現代用語の無駄知識

OJTとは:

おい(O)じーさん(J)助けてくれ(T)の略。
2006年初頭から関東地方を中心に使われ始めた若者言葉で、主にじーさんに助けを求めるときに使用される。しかし、肝心の助けを求められる対象であるじーさんがこの言葉の意味を理解していないことが多く、期待どおりの効力が得られることは少ない。筆者の祖父は語る。

「ああ?おじぇち?知らんよ、そんな言葉。(ここで筆者の説明が入る)ふーん、最近の若い連中は何考えてんのかわかんねぇなぁ。大体な、言葉使いがなっとらん。目上のもんにお願いするのに『おい』はねぇだろう」

これはあまりにも尤もな意見である。故に、お(O)じいさま(J)助けてください(T)の略でOJTということにしておいたほうがいいだろう。


使用例

「や、やべぇ、地震で荷物が崩れてきた。一人じゃ支えきれねぇ、OJT!」

「金がねぇ!OJT!」

「仕事がねぇ!OJT!」

「明日もねぇ!OJT!」

「怪獣だぁー!OJT!」

「100人乗ったら、OJT!」

OJTOJT!違うよ、昼飯はさっき食っただろ!OJT!」


関連語

OJTT
おい(O)じーさん(J)たちどころに現れて(T)助けて(T)の略。じーさんがその場にいない時、願いよ届けと言わんばかりに使用される。


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この文字列について。
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by rei_ayakawa | 2007-08-29 21:28 | 空想

魔法少年アキラ

「君は今日から魔法少女として、わるいやつらと戦うんだにゃ!」
「ぼく、男なんだけど……」
「こ、これだからこの年頃のガキってやつは……」



「あ、そんなこと言ってる間にわるいやつが来たにゃ!」
「えー」

ずっしん、ずっしん! 凄い地鳴りが辺りに轟きました。

「ガハハハハ! オレは遠い国で起こった波が洗い流しきれない悲劇、毒と炎の使者、変態全身タイツ男だ!」

遠い国では老婆が海を見ていました。それはある朝の話。見えない星が、一つ増える。流れる。流れる。星が流れる。空には鉄の棺桶が編隊を成す。

一方、変態全身タイツ男はセクハラに精を出していました。道行く女性に片っ端からスキンシップと称したボディタッチを敢行していきます。

「くっそぉ、変態タイツ男め! アキラ、今こそ君の出番にゃ。魔法少女……じゃない、魔法少年に変身するんだにゃ!」
「変態全身タイツ男だよ?」
「……? 一瞬なにをぼくに求めてるのかわからなかったにゃ! んな微妙な違いどうでもいいからさっさとするにゃ!」
「はいはい」

しかし、冷静に考えれば、どうやって変身するのかを知りません。

「どうやって変身するの?」
「ああ、説明してにゃかったかにゃ。さっき渡した魔法のステッキを掲げて、呪文を唱えればいいにゃ。呪文は『光が、光がその速さを持って私を殺し、命は、命は太陽の浮き沈みとともに伸び縮みし、やがて憂鬱は悪意のない笑顔にかき消される』にゃ」
「覚えにくいな……ま、やってみる」

アキラはステッキを掲げて叫びました。

「『光が、光がその速さを持って私を殺し、命は、命は太陽の浮き沈みとともに伸び縮みし、やがて憂鬱は悪意のない笑顔にかき消される』!」

変態全身タイツ男は、その様子を見ながら思いました。(故郷に残してきた兄弟たちは元気にやっているだろうか……)そして、アキラの体を眩い光が包みました。

「スカートなんてはじめて履いたよ……あ、やば、変な趣味に目覚めそうかも」
「つーか、よく一発で呪文覚えられたにゃ……」

こうして対峙した魔法少年と変態全身タイツ男。あ、そういえば変態全身タイツ男は変態全身タイツ男といいながらブリーフ一丁でした。女装した女顔の少年とブリーフ一丁の成人男性との戦いです。危険な香りが漂いますね。変態全身タイツ男が叫びました。

「むむ、なんてことだ!魔法少女ならまだしも、魔法少年ではセクハラのしようもない!」

変態といえど、一から十まで変態なわけではないようですね。でも、考えてみれば日本では近代まで少年愛が盛んに行われていたわけですし、一概に少年愛嗜好を変態と呼ぶのも問題ですよね。まぁ、犯罪ですけどね。文句なしに。

「で、どうやって戦えばいいの?」

アキラが魔法ネコに聞きました。

「何はともあれ呪文だにゃ。『ママとパパがプロレスごっこ!? あたしも混ぜてもらおうかしら。ドキドキ初体験』と唱えれば、不思議なことが起こってどうにかなるにゃ」
「呪文なんだ、それ……」

変態全身タイツ男は、未だにどう戦えばいいのか迷っています。こいつには、セクハラ以外の戦闘方法が無いようです。そう考えると、アキラが男の子で良かったとも言えますよね。色々と。

「『ママとパパがプロレスごっこ!? あたしも混ぜてもらおうかしら。ドキドキ初体験』!」

その瞬間、不思議なことが起こりました。遠い国で。

「あー、不思議だー……」
「どうしました、大統領」
「唐突に核ミサイル発射したくなってきた」
「マジっすか? それはまずいですよ」
「あ、ダメ。我慢できないもん。ポチっとな」
「えー、マジかよー」

ミサイルは、変態全身タイツ男めがけて一直線。

「おかーさん、キノコみたいな雲だよ! 凄いよ!」
「本当ねぇ。なんて見事なんでしょう。あら、この大根安いわね」
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by rei_ayakawa | 2007-08-27 06:03 | 空想

ある朝の話

電車で座ってると眠いよね。

あれは何らかの催眠装置なんじゃないかと思う。だって、スペクタクルに眠いもん。あの微妙な振動がもうたまんない。エロい。

さて、先日も見事に座席を確保し、少し眠って疲れを取ろうとしたのである。そこで予想外の展開。隣に座っていた若い女性が一足早く、夢の中へ行ってみたいと思いませんかールルッルー状態と化しており、私のほうへもたれかかって来たのである。

うーん。

灰色の脳細胞が出力を上げる。果たしてこの状態を肯定的に捉えるべきか、否定的に捉えるべきか。

まず、非常にこの状態はウザイ。長い髪が私の腕に垂れかかり、実にこそばゆいことこの上ない。落ち着いて寝れやしないので、マイナス1ポイントである。

次、人間にとって顔は全てではないが、重要であることばかりは否定しようが無い。やっぱり、どうせもたれかかられるなら美人がいい。状況次第では先ほどのマイナスが帳消しにされるのだが、うまい具合に長い髪の毛がブラインドの役割を果たして、どんな顔をしているのかわからない。どこの平安貴族だ。持ち前のポジティブシンキングで美人を想像し1ポイントプラスするも、お高く留まっているのがムカツクのでマイナス1ポイントである。

総合点はマイナス1。なんてこった、文句なしに大損こいている。貴重な睡眠時間がこんな形で奪われるとは。朝っぱらから気分は最悪である。

このような悲劇を二度と繰り返してはならない。やはり、お高く留っていてはいけないのだ……。
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by rei_ayakawa | 2007-08-24 17:40 | 日々

雨天名刀

今日も雨が降っている。

(めんどくせぇな……)

そう思いつつも、玄関の傘立てから無造作に一本引き抜く。何故かサムライソードだった。何故か、サムライソードだった。何故だよ。

「おーい、サトミ」

とりあえず、台所にいる妻に声をかける。

「なにー?」
「傘立てに日本刀が入っているんだが」
「あー」
「しかも、抜き身なんだが」
「それねぇ。鞘がどこか行っちゃったのよ」
「私が聞きたいのはそういうことじゃないんだ」

詳しく事情を聞くと、押し込み強盗が持っていたのを奪って手に入れたということだ。これはちょっとした衝撃である。

「へぇ、そんなことがあったんだね。はじめて知ったよ」
「全くこれだから家庭に無関心な仕事人間は……」
「いや、君微塵もそんな話してなかったよね?私知らなくて当たり前だよね?」
「しかも言い訳ですか、はっ」
「力の限り鼻で笑ってくれたね。それで、その強盗はどうなったの?」
「こうなったわ」

妻が和室の押入れの戸をを開けると、中にもっさりとしたあごひげを生やした男が正座で座っていて私を見るなり頭を下げ

「警察だぁー!!!」

私が受話器に飛びかかろうとすると、背筋に凄まじい衝撃が走り(ああ、これは愛しき人のジャンピング・ニーだな。久しぶりに食らったよ……)と感傷的な気持ちになりながら顔面が壁にぶち当たってイタタタタ。

「まぁ、とりあえず落ち着くのよ、あなた」

私としては相当に落ち着いた対処のつもりだったのだが、悲しいことにその思いを伝えることができない。あまりの激痛にもんどりうっているからだ。

「事情を知ればあなたも納得できるはずよ。まず、彼にはお金が無い。勤めていた会社からリストラされてしまったらしいの。餓死寸前というところで、やむを得ず強盗なんて手段に出てしまったのよ。最初から誰かを傷つけるつもりは無かったみたいだし、話してみれば根はいい人だったわ。彼が新しい仕事を見つけるまで、最低限の寝床と食事を与えてあげようって思ったの。あなたからすれば、こんな得体の知れない男と日中二人きりなんていろんな意味で危険すぎると思うかもしれないけど、大丈夫。いざとなったら武力制圧できるし、私の心がこの人に傾いて危険な情事って方向性になれば、まぁ、それがあんたの人徳ってやつよ」

肉体的なダメージは落ち着いたが、さりげなく追加された精神的ダメージがかなり深い。しかし、一つ気になることがあった。

「……餓死寸前まで日本刀持ってたのか?」
「へ?」

妻がとぼけた声を出す。

「いや、だからさ。売ればよかったんじゃないの?日本刀を。そこそこ値は張るだろうに。何で最後に残ったものがそれなのさ」
「うーん、ほら、それは最終的にどうにもならなくなった時のために……」
「おかしいだろ、それ。果物ナイフでいいじゃないか。何で着の身着のままになるまであんなかさばるもん持ってんだよ」
「じ、実は先祖代々伝わってきた名刀で、あれだけは最後まで大切にしてたとか……」
「なおさら売れよ。名刀ならさ。ていうか、そんなもんを大切にするあまり強盗とかしちゃダメでしょ」
「……うん」
「わかったね。わかったら、捨ててらっしゃい」
「はい……」

妻は強盗の襟首を掴み、「信じてたのにー!」と叫びながら窓の外へ投擲した。彼女の目に光っていたのは、やはり涙か。強盗の姿は、山の向こうへと消えていった。

私は彼女の肩を抱き寄せながら、(やっぱりこれって殺人になるのかな)と思うのであった。
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by rei_ayakawa | 2007-08-22 18:43 | 空想

アスリートたち

「めくるめくハイ・スピードの世界へようこそ。ハイハイ・スピード世界一決定戦が今よりはじまります。各界のスピード自慢を集めてハイハイのスピードを競うというユニークなこの企画、解説のタナカユキオさんはどう思われますか?」
「意味がわかりません」
「はい、ありがとうございました」

「第一レースは、早食いチャンピオンとギター早引きチャンピオンの対決です。解説のタナカユキオさん、この勝負どちらが優勢でしょうか?」
「意味がわかりません」
「はい、ありがとうございました。いよいよスタートです」

バーン。

「両者一斉にハイハイを開始しました」

ハイハイハイハイハイハイハイ!
ハイッハイッハイッハッイハイ!
ハーイ!ハイッハハイハイ!
ハッ!イッ!ハッ!イッ!ハッ!
ハーイ!ハイハイハイハイハー!

「勝ったのは早食いチャンピオンでした」
「意外と見ごたえありましたね」
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by rei_ayakawa | 2007-08-20 20:16 | 空想

良き事

「おい、良い事をしようぜ!」
「いいね。良い事をするのは良いことだからな」

「よし、まずはあそこの崖っぷちにいる、いかにもこれから飛び降り自殺しますって感じの人を止めてくるぜ!」
「おう、がんばれよ!」

タッタッタッタッタッ。

「そこのお嬢さん!」
「はい?」
「自殺なんてやめろー!喰らえ、低空タックル」
「え、なんでタックル……」

ヒュー。

グシャッ。

「さすがだぜ、必殺の低空タックルで自殺を止めて他殺にしやがった!」
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by rei_ayakawa | 2007-08-18 06:03 | 空想
庭の草むしりをしたのである。

暑い中、腰に蚊取り線香をぶら下げてやつらの襲撃を回避しつつ、黙々と草をむしる。激烈にだるい作業であるが、こんな時こそプロポーズの言葉を考える絶好の機会だ。(君の瞳に万歳!うーん、ちょっとオーバーかなぁ。君の瞳に漫才!こっちだな)真剣な表情で思考を巡らせながら、ひたすらに草をむしる。

そんな感じでしばらく続けていたところ、草をむしりとってむき出しになった地表で、うにょうにょと動くものが目に留まった。ミミズである。ミミズは人の目から逃れるかのように、まだ手を着けていない草ぼうぼう地帯へと這って行った。それを見た私の胸に去来したのは、幼いころの思い出。『映画監督になりたい』そうだよな、そんなことを思ったこともあったよ。

そして、庭はハリウッドとなった。

逃げるミミズを追撃するように草を引っこ抜いていく私。ミミズのいる場所を直撃するような取り方はせず、微妙に位置をはずした場所の草に手をかけていく。私が草を握った手に力をかけると、地面が隆起し、根ごと引っこ抜かれた草からはパラパラと土がこぼれおちる。ミミズ視点から見れば、大迫力のスペクタクルであろう。案ずるな、取って食いはしない。ただ、盛り上げたいだけだ。

そうだ、考えてもみれば、アクション映画の悪役たちもこんな心境だったのではないだろうか。彼らだって人の子だ。「やっぱ、人殺しはちょっと……」とか思っていておかしくない。しかし、盛り上げたい。せっかくだから盛り上げたい。ゆえに、雨あられと弾丸は降りそそぐが、主人公には当たらない、否、当てていないのである。が、主人公はそんなこと知る由もないので、容赦なく反撃して皆殺しにしたりする。冷静に考えれば当たり前だ。ちょっとお茶目が過ぎるよ、みんな。

実際、私のしていることだってミミズからすれば大迷惑である。何故にこんな肝の冷える思いをしなければいけないのか。盛り上げたいとか意味わからん、もう、意味わからん。そう思っていておかしくない。ああ、悪いことしたな。もうお行き。私は慈悲の心に目覚めたのだ、ミミズが隣の庭に逃げ込んだ時点で。

完全に手おくれといえよう。
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by rei_ayakawa | 2007-08-15 21:12 | 日々

スパイダー雲の冒険

ぼくの名前はスパイダー雲。蜘蛛だ。

今日は蜘蛛の王女から昼食会の誘いを受けている。ウキウキ気分の旅立ちだ。場所はマレーシアのミネソタ州神保町。自宅からだと、徒歩で3時間、電車で3日かかる。徒歩以外の選択肢は正直ありえない。歩くのは慣れていないが、致し方ないだろう。

外に出ると、霧が深かった。街灯が薄暗い町並みを照らす。まだ時間には余裕があるが、なにせ王女からの誘いだ。遅れては洒落にならないので、不測の事態に備えて早めに出ることにする。向かう場所が場所だけに、発声練習にも気合が入った。うん、我ながらいい声だ。これなら問題はあるまい。

いざ行かんと歩を進めようとしたところで、携帯が鳴った。マイ・ガールフレンドの飛行機蜘蛛からだ。何の用事だろう。

「はい、もしもし」
「もう家でた?」
「いや、今出るところ」
「そう、それなら良かった。じゃあね」
「それじゃ」

さあ、出発だ。

カサコソと8本の足をせわしなく動かして歩く。住宅街を抜けると川沿いに土手があり、道が南北に伸びている。そこを西に折れ、東北へ向かい、南西には北斗七星が輝く。この辺りはいつも夜だ。

「おう、スパ雲っつぁんじゃないか」

声をかけてきたのは、熊のトラさんだった。

「トラさん、悪いが今日は派兵できないよ。用事があるんだ」
「いやいや、今回は総選挙がないからそんなことはどうでもいいんだ。それより、ワイドショーに巨乳アイドルが出ていたのは知ってるかい?」
「知ってるも何も、常識さ」
「ははは、お前には負けるよ」

ぼくらは手を振り合って別れた。

やがて、道は砂漠になった。太陽がsun sunと照りつける。そこら中にソーラー発電機が設置されている。この地域の電力は、ほぼ全てこれでまかなわれているのだ。ひぃひぃ言いながら歩を進めるぼくに、一個の発電機が語りかけてきた。

「なんか大変そうだなぁ。どこに行こうとしているんだい?」

こんな砂の大地に生れ落ちて、退屈なのかもしれない。

「生の苦しみから逃れられるところまで……とりあえずは、昼食会へ」
「そうか。俺には発電し続けることしか出来ないが、がんばって食べて来いよ」
「見ず知らずの蜘蛛にそんな優しい言葉をかけるなよ」
「いや、あんたは男の中の男さ」

なかなかいいやつじゃないか。少し暖かい気持ちになった。おかげで、暑いことこの上ない。

黙々と歩を進める。景色は変わり続ける。砂漠を抜け、海を越え、氷河期を切り裂き、熱帯夜に未必の故意を見て、ようやく超高層のオフィス街まで辿り着いた。

ここまでくれば、あと少しだ。人の波を縫って目的のビルに入り、エレベーターのボタンを押した。轟音が響き渡って、ビルは飛び立ち、雲を貫き、あっという間に大気圏外まで到達した。

宇宙は広い。このまま踊り続けていれば、昼食会の会場に辿り着けるはずだ。

チーン。

ドアが開いた。そこは桜の花びらが舞い散る丘の上だった。王女はぼくに気がつくと、エレガント極まりない足取りでこちらに近付いてきた。

「よく来てくれましたね、スパイダー雲」
「この度はお呼びいただいて光栄です」
「それじゃ、指切りしましょうか」
「もちろんです」

ぼくと王女が小指を絡める。王女は小鳥のさえずるような美しい声で、呟くように歌った。

ゆびきりげんまん ゆびきったらはりせんぼんのます♪

王女が軽く目配せをする。

「指切った!」

ぼくが元気よく指切りを宣言した瞬間、祝福の拍手が怒号のように鳴り轟いた。蜘蛛に指なんかないじゃないか!くそっ、ぼくは嵌められたんだ……。
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by rei_ayakawa | 2007-08-12 22:30 | 空想

個人的には魚より肉派

「人間なんて愚かな生き物さ」とかしたり顔でほざく人が全く理解できないのである。

大体にして、そういうことを言う人は一つ重大な事実を忘れている。仮に人間が愚かな生き物だったとしよう。しかし、私は愚かな生き物ではない。そして、私は人間である。そう、ここに大いなる矛盾が生じてしまうのである。人間が全て愚かであることを実証するのは難しいが、私は確実に愚かではないどころかむしろパーヘクッ。パーヘクトである。私に誓って間違いない。故に、人間=愚かという公式は成り立たないのである。

まぁ、この勘違いは仕方がないことなのかもしれない。彼らもこの世に私のようなパーヘクトヒューマンがいるとは、思いもよらなかったのだろう。そう考えると、私はついている。自分自身がパーヘクトだったおかげで、変な勘違いをしないですんだのである。冒頭のようなセリフを吐く人は、悲しいことに自分が愚かだからそう思い込んでしまったのだろう。愚かな自分が「人間なんかみんな愚か」と思っている時点で、それが間違いだと気がついても良さそうなものではあるが。ま、そこまで頭も回らないくらい愚かだったのだろう。魚食べたまえ。

魚には、頭を良くするといわれているDNA(デオキシリボ格さん)が入っているので、お勧めである。
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by rei_ayakawa | 2007-08-10 20:32 | 日々