写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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<   2006年 10月 ( 8 )   > この月の画像一覧

あれは、ある晴れた朝のことだった。

やつらは俺の家に乗り込んできて、部屋の中をめちゃくちゃに引っ掻き回した。
俺のぬいぐるみコレクションが宙を舞い、地に叩きつけられる。
挙句の果てに、俺のかわいいみーちゃん(兎のぬいぐるみ。5歳の頃からずっと一緒だった)を攫って行きやがったんだ。
俺は泣いた。
あまりの理不尽さに泣いた。
空を暗雲が包み、天がポツポツと涙を流す。
いや、違う。
お前は泣くべきではないのだ。

取り戻さなければ。
取り戻さなければ。
取り戻さなければ。

俺は愛用の自転車に跨った。
空には雷鳴が轟く。
自転車をこぐ、こぐ、こぐ。
風を切り、いくつもの水滴が顔を打つ。

気がつけば、背後に何者かのけはい。
振り向くと、三輪車に乗った幼児が俺のすぐ後ろについてきていた。

「あんちゃん……俺と勝負しないかい」

やつのギラリと輝く目は、そう語っていた。

「ふっ、いいだろう。相手になってやるぜ」

俺もピカリと輝く目で、そう語った。
そしてすぐに抜かれた。

「いや、ほら、あれだ。俺、ここまで300Mも全力疾走してるから。すっごく疲れてるから。わかる?体調万全だったらお前なんかに負けるわけないって。あったりまえじゃん。あっはっは」

俺ははるか前方で疾走する三輪車に向けて、死んだ魚のような目でそう語った。

なんかもう、えらい疲れたのでバスを使うことにした。
雨はさらに勢いを増している。
傘を持ってこなかったのは不覚だった。
待ち時間が辛い。
バスがくるのは5分後だ。
これほど長い5分間は初めてじゃないかと思えた。

「帰ろうかな」

一瞬そんな思いが頭を掠めたが、すぐにかき消した。
俺は一体何を考えているんだ。
みーちゃんを見捨てるなんて、そんなこと俺に出来るわけないじゃないか。
やつらから、なんとしてもみーちゃんを取り返さなければならないのだ。
雨がどうした。
心頭滅却すれば火もまた涼しだ。

俺は心頭滅却したが、雨は冷たいままだった。

火にしか効果がないのか、なんてこった!
俺は先人のくだらない知恵に惑わされたことを、凄まじく後悔した。
具体的にどのくらい後悔したのかというと、あまりにうなだれすぎて地面に頭が埋まってしまったくらいだ。
そして、頭は抜けなかった。

俺は焦った。
このままでは窒息死してしまう。
なんかバスが来たような音がするし、急いで顔を引っこ抜かなければならない。
神よ、俺に力を与えたまえ!

「えい」

やったぁ!抜けたぞぅ!
俺は大急ぎでバスに飛び込んだ。

雨は降り続く。
俺は座席に腰かけ、安堵のため息をついた。
このバスに乗っていれば、いずれやつらのアジトにつく。
ついに、ここまできたのだ。
空には雷鳴が轟くが、恐れることはない。
八百万の神々が俺の行く手を照らすだろう。

本当の戦いはこれからだ!
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by rei_ayakawa | 2006-10-27 00:17 | 空想

明日に向かって乾け!

「野菜を炒めさえすれば、野菜炒めになるんだ!」

詩人の心を感じさせるこの名言は、かの無名な私の言葉である。文句なしに名言だ。具の大きさがバラバラだっていいじゃないか。人間だもの。

そんな訳で、私は料理が苦手である。もとが不器用なのもあるし、そもそもあまり料理をしないというのもある。

あれは確か、私がまだ小学校低学年の頃だっただろうか。父がたまの休日ということで、私たち兄弟に手作り料理(サッポロ一番 塩味)を振舞おうとした時のことだ。ラーメンの具にするため、野菜を軽快に包丁で捌いていく父。軽快すぎて、自分の指まで捌く父。誰がこんな展開を予想しただろうか。

包丁は相当に深く父の指をカットしていた。ちょっと切ったどころの話ではない。明らかに三分の一くらいの位置まで入っていた。それを見た幼い私が、どれだけのショックを受けたかは想像に難くない。そして、病院にも行かず治す父を見て「うちの父ちゃんはすげぇ。殺しても死なねぇ」と妙なところで感心したことも覚えている。

この出来事以来、私は包丁に強い恐怖心を抱くようになった。18過ぎたあたりからさすがに扱うようにはなったが、未だに指を切らないようにビクビクしながらやっている。当然出来ることなら扱いたくないため、積極的に料理をしようなどという気は起こらない。もちろん、オリジナルの料理を作ったことなどあるはずがない。と言いたい所だが、実はある。


rei_ayakawa流オリジナルピッツァ

材料

市販の冷蔵ピザ(ピザ・トッピング・乾燥剤の入っている物)

作り方

1.ピザ・乾燥剤を取り出す。トッピングは袋の中に残しておくのがポイント。
2.トッピングと間違えて乾燥剤をかける。
3.お皿に載せて、レンジで温める
4.出来上がり。

楽しみ方

大切なこととして、トッピングと乾燥剤を間違えたことに気がついてしまってはいけません。
あくまで、ピザの上でぶくぶくじゅーじゅーいっている不可思議な物体Xはトッピングだと信じ込んで食べ始めましょう。

最初に口に運んだ時に『ジャリッ』と砂を噛んだような音が聞こえるはずですが、これはこういうものなんだと認識し、気にせず食べましょう。
また、よほどダイナマイトな味覚の持ち主でない限り「まずい」と感じるはずですが「捨ててしまうのはもったいない」という強い信念でもってガンガン食べ進みましょう。

およそ半分くらいも食べれば、いかに強い信念を持っていたとしてもそろそろ耐え難くなってきます。
人間、無理をしないことも大切ですので、もはや生ゴミと貸したピザを捨てに台所に向かいます。
ピザと一緒に、袋を捨てようとしたあなたは気づくでしょう。

トッピング(だと思っていたもの)の袋に『食べられません』と書いてあることに……。

---

この文章について。
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by rei_ayakawa | 2006-10-23 18:57 | 日々

反響音

「やーい、やーい。おまえのかーちゃん、発泡スチロール製」
「ご冥福を力の限りお祈りいたします」
「くたばれ!汚職事件!」
「俺が交通事故で死んでしまったら、お前たちは悲しむだろ?
だから、父さんは会社に行かないんだ」
「大人なんてゴロツキだ!」
「今だ、尻を狙え!」
「頼むから、泣く時に『およよ』はやめてくれ」
「注文が多いよ。え、お客様にそんな口聞くな?」
「やれるものならやってやれ!」
「人間は生まれた直後から、どんどん無知になって行くのだ」
「それっぽいこと言ってりゃいいと思ってんじゃねえだろうな」
「性欲が食欲に大!変!身!」
「なんでもかんでも『ベジタリアンだから』で済ますな」
「いいから寝かせてくれ……うるさいよ」
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by rei_ayakawa | 2006-10-21 18:12 | 空想

ドザえもん

「ねぇ、ドザえもん」
「なんだい、くるおしいほどあなたをあいし太くん?」
「空を自由に飛びたいよ」
「はい、『タケ子豚』。これを使えば空を飛べるよ」
「それではいざ、共に行こうではないか」

「気持ちがいいね、くるおしいほどあなたをあいし太くん」
「眼下に広がる海。壮観である」
「すわ、ここでタケ子豚が電池切れ」
「ああ、ドザえもん。君ともここで今生の別れか」
「僕は君のことをきっと忘れないだろう」
「僕も忘れないだろう」
「落ちる、落ちる」
「ドザえもんが沈んでいく。さらばドザえもん。さらば。」



「この故事が元となり、水死体の事をどざえもんと呼ぶようになったのです」
「せんせーい、質問です」
「はい、なんでしょう?」
「どうしてタケの子豚で空を飛べるんですか?」
「飛ばねぇ豚はただの豚だからです」
「なれば、飛ぶ以外に道はなしか!」
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by rei_ayakawa | 2006-10-19 17:48 | 空想

求道者になろう!

私としては認めたくはない。

認めたくはないが、完全に虫歯だ。いくら私が持ち前のポジティブシンキングを発揮しても、歯が痛いという現実の前にはまるで歯が立たない。どうしてこんなことになってしまったのか?毎晩歯を磨いているというのに、何故二年に一度は虫歯になるのだろうか?今の私は、ゴミ捨て場まで意気揚々とゴミ袋を持って行ったら今日は燃えないゴミの日だと知ったときと同じくらいの、やるせない思いで一杯だ。

私が自分の歯の異変に気がついたのは、もう一月ほど前のことだろうか。いつものように甘い物を頬張りながら「なんか染みる気がする。気がするだけだよな、うん。病は気からって言うしな」などと思いつつごまかしていたのだが、先週あたりからもうなんか普通に痛い。具体的にどのくらい痛いかというと、まるで虫歯になったかのような痛さだ。というか、虫歯だ。ああ。

ここまでの流れで大体わかると思うが、私は歯医者が嫌いである。痛いしめんどいし、好きになれる要素が一つもない。まぁ、虫歯の方が痛いからしぶしぶ予約を入れるわけだが、気が重くなること山の如しである。しかし、冷静に考えてみれば今こそポジティブシンキングが必要なのではないだろうか。

歯医者といえば、ドリルである。

いや、異論があろうことはわかっているが、ここはドリルということにしておく。ドリルといえば地底戦車である。先端のドリルで土の中を突き進むあれだ。地底戦車といえばSFであり、SFといえばサ・ファリパークである。サ・ファリパークといえば、ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンだ~♪近すぎちゃってどうしよう♪かわいくってーどーしよう♪富士サファリパーク♪であるし、ほんとに(中略)パーク♪といえば富士山である。

富士山といえば日本一である。日本一といったら桃太郎であるし、桃太郎といえば金太郎である。金太郎とくれば飴しかないし、飴はすなわち雨である。雨は天の涙。涙は激情の表れである。激情といえば劇場であり、劇場といえば映画館だ。映画館といえばポップコーンであり、ポップコーンはお菓子である。お菓子といえば甘い物。甘い物といえば虫歯。虫歯といえば歯医者である。

かくして、様々な事象が歯医者を通じて一つの輪となった。すなわち、歯医者には世界そのものが内在しており、歯医者もまたあらゆる場所に存在する。歯医者に行くということは世界の真理に近付くことであり、決して悲観的に捉える必要はないのだ。

よーし、行く気がモリモリ出てきたぞー(棒読み)
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by rei_ayakawa | 2006-10-16 22:18 | 日々

犯行期

我が家のTVが反抗期に入った。

彼は、カラーTVであるにもかかわらず白黒の画面を映すことによって、しがらみという名の鎖を引きちぎり、力強く大空を舞うワシのように、自由に、そして優雅に生きて行きたいという思いをアッピールしている。私はとりあえずぶっ叩いて直す。完全に体罰だ。

相手がTVだから許されることではあるが、これがもし自分の子供だったら大変なことである。たとえば、私に娘が出来たと仮定する。最初のうちはかわいいだろうが、そのうち自然と、父親を蛆と腐敗臭に満ちた汚物のような目で見るようになるだろう。

「親父臭いんだよ。近寄んな」
「ならば、貴様の鼻を潰してやろう」

これはかなりの高確率で新聞に載るのではないだろうか。見出しは想像したくもないが、ショッキングな事件であることは間違いない。つまり、子供をTVの様に扱ってはいけないということだ。なぜなら、新聞に載るからだ。どうせやるなら、完全犯罪がいい。

TVを叩くのと違い、周到に計画を立てて鼻をもぐべきだろう。
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by rei_ayakawa | 2006-10-12 07:49 | 日々

危機

ある日道を歩いていたら、若い男に「貴様を見る!」と刀を突きつけられた。

「ほう……この俺を見ようとは、なかなか命知らずなやつだな」

クール極まりない態度で答える俺。

「ふん、でかい口を叩きやがって。丸腰ではどうしようもあるまいよ」

武器を持っているせいか、妙に強気だ。最近は、こんな勘違い野郎が増えているから困る。

「お前は、俺に刀を突きつけている暇があったらすぐに見るべきだった。それに、本当に出来るやつはな、武器など持たなくても自分の思ったときに人を見ることが出来るもんだ」

「な、なんだと……?」

「こないのか?なら、こっちから行くぞ!」

俺は次の瞬間、虚空を泳がせていた視線を一転に絞り、焦点を合わせた。

「ぐわあああああ!見られた!見られてしまったぁ!」

悲鳴を上げ、崩れ落ちる男。俺は去り際に言った。

「人から見られる覚悟のないやつに、人を見ることなどできやせんよ」
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by rei_ayakawa | 2006-10-07 18:30 | 空想

CLAYMAN

やあ、僕の名前は佐藤翔太。
粘土でできた人形さ。
世界の真実を知るために、旅を続けているんだよ。


悲しみの町

今日もどこかで誰かの嗚咽が漏れている。
それがここ、悲しみの町。
「何がそんなに悲しいの?」
僕は彼女に聞いてみたのさ。

「別になんでもないのよ。なんでもないんだけど、どこから話したらいいのかしら。そう、あれは一年前のことよ。パチンコで負けに負けて落ち込む私に、彼はやさしく声をかけてくれたの。『アホか』って。もう、その時にわかったわ。こいつは私に惚れてるって。私も前から彼だったら自分にふさわしいって感じてたから、それはそれで悪くないなって思ったの。でも、そこから先に何も進展しないのね。なんか変だなーって思って『好きなら好きって言ってよ!』って問い詰めたら、『は?』ですって。ひどすぎるわよね。私、騙されてたのよ!彼にとって、私とのことは遊びに過ぎなかったんだわ。あんな身勝手なことして、彼は何も感じないのかしら。ああ、でも、でもね。あんな最低な男だとわかってても、まだ割り切れない自分がいるの。私どうしたらいいのかしら?およよよよ……」

僕には、彼女の言っていることがよくわからなかった。
どう考えても、この話からその彼が最低だという結論が導き出せなかったんだ。
僕は疑問に思って聞いてみた。

「それはただ、あなたが勘違いをしていただけじゃないの?」

そしたら彼女は、急に冷たい目つきになってこう答えた。

「土くれのあなたには、私の気持ちなんてわからないのよ」

そうなのかもしれない、と僕は思った。


喜びの町

今日もどこかで誰かが心を浮き立たせている。
それがここ、喜びの町。
「何がそんなに嬉しいの?」
僕は彼に聞いてみたのさ。

「聞きたい?聞きたい?やっぱり聞きたいよなぁ。それはもう素晴らしいことがあったのさ。話せば長くなるんだけどね……」

「じゃ、いいや」

僕はその場を立ち去ろうとした。

「HEY!ストップ!ストッピング・セレナーデ!全く、君はせっかちさんだなぁ。本当はあんまり長くないんだから、ちゃんと聞いていってくれよ」

「はぁ。それならどうぞ」

「じゃ、仕切りなおすよ。それはもう素晴らしいことがあったのさ。話せば長くなるんだけどね。なんと、宝くじで1千万円当たったんだよ!」

「そうなんだ。おめでとう」

「……それだけ?」

「え?」

「違うだろ?ここは明らかに『全然長くないじゃないかー!』って突っ込むべきところだろ。君は本当になんというか、粋な会話センスのかけらもないというか、もうダメダメだよ。ダメダメ」

「ダメダメかな」

「うん、凄くダメダメ。まぁ、君は粘土人形だからね。その辺分からなくてもしかたがないかもしれないけど」

「そうなのかもしれないね」

僕はその場を立ち去った。


怒りの町

今日もどこかで誰かが不満を募らせている。
それがここ、怒りの町。
「何でそんなに怒っているの?」
僕は彼に聞いてみたのさ。

「それがなぁ。俺の知り合いにビデオ貸してたんだけどよ。そいつが見事に上書きしてくれやがってな。怒髪天を突きかねない状況だったんだけど、あいつもそこそこ落ち込んでたみたいだし、俺も大人だからさ。『まぁ、気にするな』って言ってやったわけ。そしたら、あいつの反応が『わかった、気にしないよ!それじゃね!』ばっかやろおおおお!お前そうじゃないだろう、少しは気にしやがれこのクソが!というわけだ。わかった?」

あまりわからなかった。

「だって、あなたは『気にするな』って言ったんでしょ?そう言われて気にしなかったことの、なにがいけないの?」

彼は落胆したかのように言った。

「まぁ、土人形のお前からすればそうだろうな。お前にゃわからないだろうが、人間様の世界はもっと複雑なんだよ。とっとと行きな」

きっと、そういうことなのだろう。


出会いの町

一人の女の子が、通りの真ん中にたたずんでいた。
僕と同じように、粘土で出来ている体。
「こんなところで、何をしているの?」
僕は彼女に聞いてみた。

「あなたこそ、なにをしているの?」

無表情で答える粘土人形。
僕は黙って手を差し出す。
何故そうしたのかはわからなかった。

彼女は僕の手を握り返す。
冷たい手だった。

「この町から出よう」

彼女は、こくりと頷いた。


うたかたの町

僕たちは走る。
何かにせかされるように。
天からは雨が降り注ぐ。

町を出るための門は、閉じられているだろう。
そんなことはわかっている。
でも、走らずにはいられなかった。

雨が降り注ぐ。
僕たちは溶けていく。
やがて、この町と一体になるだろう。
それでもただ、今は走った。

ここは悲しみと、喜びと、怒りと、出会いと、うたかたと、そして人生の町。
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by rei_ayakawa | 2006-10-03 22:24 | 空想