写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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2008年 07月 03日 ( 1 )

パンチじゃなくてキック

1年生になったら、友達100人出来た。

それはそれで嬉しいのだが、一つだけ問題があった。全員、異様なまでにスフィンクスが好きなのである。

「おはスフィンクス!」

登校途中の僕に、カオリが声をかけてきた。あまりにも無理のある挨拶と言えよう。

「やあ、おはよう」
「違うよ。おはスフィンクスだよ」

知らんよ。

僕は野球が好きだ。しかし、だからといって朝の挨拶を「おはベースボール!」にしようと考えた瞬間は今までの人生に存在しなかった。人生という長い道程の歩み方は、実に人それぞれである。これまでに友達100人から何度も説得されてきているが、僕は僕の道を行こうと思う。「おはスフィンクス」とは、言わない。

「よう、お二人さん。おはスフィンクス」

続いて、声をかけてきたのはヨウジだった。見ると、タケシとシンヤも一緒だ。自宅から学校までの徒歩10分の道のりで、総勢60人程度にまで膨れ上がるのがいつものパターンである。

「おはスフィンクス!」
「おはスフィンクス!」
「おはスフィンクス!」

繰り返される挨拶。日常の風景。スフィンクス好きの大行進。僕はただ一人スフィンクス好きではないが、別にみんなもスフィンクスの話題ばかりしているわけではないので、普通に会話は出来る。とりあえず、近くにいたシュウジに話題を振ってみた。

「昨日遅くまでゲームやっちゃってさあ。すっげー眠いんだよな」
「へぇ。ゲームって、スフィンクスの?」

そんな物は持っていない。

校門をくぐってしばらく歩いた時点で、異変に気がついた。

「なんか今日、多くね?」

シュウジはにんまりとした表情を浮かべている。カオリもなんだか嬉しそうだ。

「気がついたか。今日はいつもと違って、100人全員が集結しているからな」
「マジでか。すごいな」

見回せば、確かに普段登校時には目にしないアキヒコやユリの顔が見える。

「今日はお前の誕生日だろ? 全員で祝おうと思って、通学路が重ならないやつらにも校門で待っていてもらったんだ」
「いや、それはありがたいが、なにも朝っぱらからやることは無いだろう」
「放課後に用事あるやついたから、100人全員集まれるタイミングがここ以外に無くてさ」

動揺していると、100人がかりで校庭に連れ出された。続いて、僕を中心に100人が円陣を組むという壮絶な状況が校庭に出現。シュウジが声を張り上げた。

「ハッピーバースデー! サトシ!」

それが合図だったのだろう。残り99人も一斉に声を上げる。

「ハッピーバースデー! サトシ!」

すさまじい規模のハッピーバースデー。すげえ。友達100人ってすげえよ。皆の気持ち、心に染み渡ったぜ。そんなことを考えながら目頭を押さえていると、カオリが歩み寄ってきて言った。

「それで、プレゼントなんだけど……」

ああ、わかってる。どうせスフィンクス関連なんだろう。大丈夫。皆の気持ちが嬉しいよ。スフィンクス柄の小銭入れとかでも文句言わねえよ。

「100人皆で考えたんだ。結構もめたんだけど……結局、実用的なスフィンクスがいいよねって話になって、これに決まりました。どーぞ!」

次の瞬間、校舎が二つに割れた。分割された校舎は両サイドにスライドしていき、お互いの距離が100メートルほどになったところでストップ。唖然としている僕に、シュウジが一枚の紙切れを渡してきた。

「これ、スペックな」


汎用スフィンクス型決戦兵器 スフィンティア壱号機

全長 73メートル
重量 5万トン
武装 口   レーザーキャノン
    目   火炎放射器
    両耳  サイドバルカン
    胸部  大型ミサイル
    両前足 ロケットキック


真二つにされた校舎の間から、徐々にせり出してくるスフィンティア壱号機の雄姿。僕はどう反応していいのか分からなかったが、100人の友達は皆とても満足げだ。とりあえず、シュウジ君の意見を聞いてみることにしよう。

「これを僕にどうしろと?」
「乗れよ」
「これから、宇宙生物が襲来するとか?」
「はは、意外と子供っぽいこと考えるんだな」
「使い道は?」
「かっこいいだろ?」

僕が頭を抱えていると、なにやら間の抜けた「あ」という呟きが聞こえた。声の主は、リエだった。両手で持ったコントローラーを見つめながら、口を半開きにして目を見開いていた。少々顔が青ざめているような気も。どうやら、彼女がスフィンティア壱号機の出撃を管理していたようだ。

「ま、間違えちゃった」
「どうした!?」

シュウジが急に狼狽した様子になって、リエのそばに駆け寄った。いつもクールな彼が、こんな姿を見せるのは非常に珍しい。やはり、それだけの情熱がかかっているのだろうなぁ、あれには。

「何を間違えたんだ?」
「そ、それが……このままだと、スフィンティア壱号機が宇宙へ飛び出してしまうわ!」
「な、なんだって!?」

そんな機能までついていたのか。僕が感心していると、周りがざわめきだした。「どうする?」「まずいな」「このままじゃ、プレゼントできなくなっちゃう」「とりあえずプレゼントだけはしとかないとな」「今のうちに乗せちまおう」「うん、それがいい」なにやら不穏な空気になってきた……と思ったが早いが、友達100人に引っ張られ、スフィンティア壱号機のコクピットに突っ込まれ、宇宙のどこかの星に着陸した。

帰り道は分からない。どうするかなぁ。





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by rei_ayakawa | 2008-07-03 22:56 | 空想