写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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2007年 10月 10日 ( 1 )

不健康な世界2

少年と少女(1)

「ねぇ、おかーさん、おかーさん」

僕はずっと呼んでいるのに、お母さんはなぜ空ばかり見ているのだろう。ああ、最近まったく眠れていない。滑り台から降りて、お母さんの袖を引っ張ろうとした。

「やめたほうがいいよ」

声のした方向をみると、ちーちゃんが立っていた。

「なんで?」
「どーせ、わかってもらえないから」

夢も希望もないこと言うなぁ。

「そんなこと、やってみなくちゃわからないじゃないか」
「わかるわよ。大人なんてみんなバカだもん」

なんてありがちなセリフ……僕は一つの確信をもった

「……キミはちーちゃんじゃないね」
「ぎょぎょ!なぜわかった!?」
「ちーちゃんはそんなこと言わない。そんなありがちなひねくれ方してないもん、あの子。あと、ぎょぎょ!とか言わないし……」
「むむむ!ばれてしまっては仕方がない。そう、私の正体は……お父さんだぁ!」

これはちょっとした絶望かもしれない。

「……なにやってんの?」
「いやー、お前には一人で生きていける究極超人になってほしくてなぁ。そのためには、まずはお前に親離れさせなくちゃいけないだろう。私なりにいろいろ考えて努力しているのだよ、はっはっは」
「えーと、お父さんは子供のころから究極超人だったの?」
「はっはっは、そんなわけないだろう。お前ならできると信じてのことさ」
「だよね、今でも凡人っていうかむしろバカだもんね……。ゆーくんビーム!」
「たばっ!」

両眼から放たれた僕の必殺技をもろに食らい、お父さんは天空高く吹っ飛び、そして星になった。とはいえ、あの人はやたらタフなのでそのうち帰ってくるだろう。まがりなりにも僕の親だ。だけど、僕もあの人の子供なのだ。涙が出そうだ。

「でも、もしかしたら本当にダメかもしれないよ?女は魔物だもの」

振り返ると、ちーちゃんがいた。セリフから考えると、今度は本物みたいだ。

「いいんだよ、やるだけやっておきたいんだ」
「ふーん」

ちーちゃんは思いっきりその場に座り込んでこちらを見ている。とりあえず、追い払おうと思った。ちーちゃんなんかの相手をしている気分じゃないのだ。

「先帰りなよ。見ててもつまんないよ」

極力やんわりと遠回しに「邪魔、帰れ」という意思を表す。

「やだ。見てる」

お前、空気読めよ!

「帰りなさい」
「帰りません」
「却下」
「だめ」
「アウト」
「セーフ」
「ヨヨイノ」
「ヨイ」

うーん、想像以上の粘りだ。

「あのさぁ、なんでそこまで……」
「あたしは見てるよ。だから、一緒に帰ろう」













空では鉄の棺桶が編隊を為している。

「ちーちゃん」
「ん?」
「……ありがとう」

ちーちゃんは満足げに胸を張った。すぐに調子に乗る。だから嫌いなんだ。


とある青年の肖像

うるさいよ、世界。

スタッフ笑いが鮮やかに響く、この欺瞞。どいつもこいつも三文役者だ。俺たちは騙されている。真実を伝えてくれる賢者を探さねばならない。俺は旅に出ることにした。子供のころから感じていた違和感に、決着をつけるために。

家を出て3歩歩いたところで、さっそく賢者らしき人を見かけたので聞いてみた。

「すみません、あなたは賢者ですか?」
「いえいえ、私などはとても賢者というほどでは」
「そうですか」

残念、違ったらしい。この世に賢者と呼べるような人間はいないのか。とてつもない絶望感に襲われ、その場に跪いた。人生なんてクソである。そんなことを考えていると、賢者ではない賢者らしき人が慰めるように言った。

「大丈夫、3歩で知りつくせるほど世界は狭くありません。あなたの望む賢者は、きっとどこかにいますよ」
「どこにですか!?」
「いや、だからどこかにね……」
「くそっ、わかったような口をきくな!」

俺は走った。その場から全力で走り去った。もう嫌だ。どんなに探しても賢者なんかに会えはしないのだ。救済もあり得ない。

ああ、これからどうやって生きていけばいいのだろう……。


少年と少女(2)

僕らは二人で歩いている。

「結局だめだったね」
「うん」
「ゆーくん、へこんでる?」
「吾輩がへこむわけなかろうが」
「そう」

夕日が紫雲を表現している。
空はパレット。

「ねぇ、ゆーくん」
「ん?」
「あたしたち、ビーム撃てるってすごいよね」
「……変なだけじゃないか」
「変でも、すごいよ」
「そうかな」
「そうだよ」

まぁ、言われてみればそんな気もする。
僕たちだったら、素手でヤクザの事務所に殴りこむこともできるわけだし。

「そうなのかもね」
「うん」

ちーちゃんがぼくの顔を覗き込む。

「ゆーくん、へこんでる?」
「別に」
「そう」

妙にうれしそうだった。
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by rei_ayakawa | 2007-10-10 18:07 | 空想