写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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2006年 05月 12日 ( 1 )

何もかも中途半端な夜

「鏡の色って何色だと思う?」
「涙の色かな」

世界がぐるぐる回っている。
視界がぼやけて、足元がふらつく。
ああ、そうだよ。
明らかに飲みすぎだ。
正義のヒーロー、ノミスギダー!
ほらな、飲みすぎだ。
コンクリートの上で軽やかにダンス。
華麗なサウザンドバードステップだ。
ショーウィンドウに移る俺の姿は、よく見えない。

俺は勇者だ。
伝説の剣を振るって、魔王を倒さなければいけないのだ。
「いくぞ、魔王!」
「まて、その前にトイレだ!」
「なにぃ、そういうことは俺が来る前に済ませておけ!」
「すまん、今朝から腹の調子が悪いんだ!」
「ふん、まぁ、いいだろう。早く行ってこい」
「うん……君って優しいんだね」
「ばっ、お前、何言ってんだよ」
「好きだよ、君の事」
「……俺もだよ」
「え?」
「俺もお前が好きだ」
「勇者くん……」
「これからは、ずっと一緒にいよう」

コンクリートの上で踊る。
軽やかに、朗らかに。
雨は降らない。
月も見えない。

俺は空手部の合宿に来ていた。
「おらぁ、もっと声ださんかい!」
「オス!」
「もっともっと声ださんかい!」
「オス!!」
「まだまだ声ださんかい!」
「オス!!!」
「突きとかいいから、声だけださんかい!」
「オス!!!!」
「小枝家だ三階!」
「オス!!!!!」
「島田家は二階!」
「オス!!!!!!」
「大村家が一階!」
「オス!!!!!!!」
「大村、毛が一杯!」
「お酢!!!!!!!!!」

コンクリートの上で踊る。
足がもつれる。
気分はハイになっている。
むしろ灰になっている。
肺廃敗!

前を見ると、美香がなんとも表現しがたい顔をして立っている。
なんだどーした、ずいぶんとぶっさいくな顔しやがって。
どーして泣いてるんだ?
こんな楽しい夜なのに。
ああ、世界が回る……。

月はきっと笑っているんだ。
恥ずかしがりやだから、雲に隠れて。

「涙の色って何色?」

そんなことは知らねぇよ……。

―――

この作品について
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by rei_ayakawa | 2006-05-12 00:35 | 空想