写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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2006年 03月 12日 ( 1 )

大混乱の宴

「おまえらなんか、オフサイドトラップに引っかかって死んじまえ!」
壇上に立った新郎の同僚は、そう叫んで披露宴会場を飛び出してしまった。

それまで和やかな雰囲気に包まれていた会場は騒然となった。
「オフサイドトラップに引っかかって死ぬってどういうことだ?」
「なにかの言い間違いとかじゃないのか?」
「なんでここでサッカーなんだ?」
「オフサイドトラップってなにかね?」
混乱はやまない。なにしろ、出席者の誰も彼の言葉の意味をつかめないのだ。もはや結婚披露宴などどうでもよく、出席者たちは彼の発言の真意について議論を始めてしまった。

まずは出席者の一人、品のいいメガネをかけた新郎の友人が口火を切った。
「そもそも、人間はオフサイドトラップに引っかかったからといって死にはしない。やはりこれは、彼の言い間違いだと考えるのが妥当ではないだろうか」

しかし、他の人間から嵐のような反論にあった。
「何をどう間違えたらオフサイドトラップになるんだよ!」
「言い間違えるとオフサイドトラップになる単語ってあるのか?」
「大型トラックに轢かれて死んじまえ!とか?」
「いやー、苦しいわ。それ」
彼の発言は却下された。

続いて、新婦の姉が口を開いた。
「じゃあ、私たちの聞き間違いとか?」

しかし、これも他の人間から嵐のような反論にあった。
「それじゃ、さっきと大して変わりねえじゃねえか!」
「私たちが全員難聴だとでも言うつもりか!」
「全員が全員聞き間違いとかありえないよ」
「だから、オフサイドトラップってなにかね?」
彼女の発言も却下された。

続いて、三丁目の山田さんが口を開いた。
「彼のやっているサッカーでは、フリーキックの変わりにマシンガンが与えられるのではないだろうか?」

しかし、これも他の人間から嵐のような反論にあった。
「そんなの聞いたことねえよ!」
「銃刀法違反だ!」
「山田さんって誰だ!」
「いい加減オフサイドトラップについて教えてくれないか?」
彼の発言も却下された。

続いて口を開いたのは、新郎の同僚(つまり新郎の同僚の同僚)(つまり問題の発言をした新郎の同僚は新郎の同僚の同僚)(つまり世界は1つ)だった。
「彼と新郎は二人とも新婦のことを想っていて、結果彼女を射止めたのは新郎でした。彼はその事実を未だに受け入れられず、あのような発言をしたのではないでしょうか」

しかし、これも他の人間からダイナマイトな反論があった。
「そんなことは今はどうでもいいだろ!」
「もっと真剣にオフサイドトラップについて考えろ!」
「オフサイドっていうのはサッカーの反則行為のひとつで、簡単に説明すると相手の陣内にいてボールよりも前にいる選手が味方のパスを受けようとした時、相手ゴールラインとの間に相手チームのプレイヤーが2人以上いない状態のことを言うんだ!これを相手チームが意図的に引き起こそうとする動きを、オフサイドトラップって言うんだ!」
「ありがとう!」

めでたしめでたし。

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by rei_ayakawa | 2006-03-12 16:18 | 空想