写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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突き指


 幸運なことに、私はこれまでの人生で大きな怪我をしたことがない。

 そもそも体を動かすという行為が嫌いなせいか、「鉄棒から落ちて骨折」みたいな小学校生活は微塵も送ることなく、そのままのテンションで生き抜いてきてしまった。まず、運動をしない。よしんばせざるを得ない状況になっても、どうにかして動く役割は他人に押し付けようとする。基本的に見ているのが私の仕事だ。故に、骨折どころかかすり傷を負うことすら珍しいのである。そして、不幸な事故に巻き込まれたりすることもなく年を重ね続けている。ここ最近の事例では、二年ほど前に包丁で指を切ったのがおそらく最新の怪我だったはずだ。

 そんな私が、久しぶりに怪我をしてしまった。柄にもなく、「これも庶民どもの生活を学ぶためだから」等と思い、バスケなんかやってしまったのがいけなかった。いや、ただの突き指だからお見舞い金とかわざわざ送っていただかなくてもいいのだが、もし送っていただけるという奇特な方がいたら、せっかくの好意を無碍にするのも問題なので、遠慮なく受け取らせていただくことにする。どうしてもお見舞い金を送りたい! という方は遠慮せずコメント欄にその旨を書き込んでいただきたい。ちなみに書き込むときは鍵コメントで、連絡先も一緒にお願いします。すぐにこちらからも、送金先を伝えますので。

 さて、突き指である。如何せん久しぶりだ。前に突き指をしたのは、一体いつ頃のことであったか。手の小指が中指と同じ太さになってしまうのは、見た目なかなかの衝撃である。さらに衝撃的だったのは、冷やすべきなのか温めるべきなのか本気で迷ってしまったことだ。こんな時こそ文明の利器である。携帯電話とはいいものだ。外にいながら、即座にネットができるというのがいい。さっそく「突き指」で検索して、冷やせばいいものだということを知った。また一つ勉強になった。こうした機会を無駄にせず、貪欲に知識を吸収していく精神性が、人を大きく成長させるのである。

 こうして私はまた一歩賢人の領域へと近づくことができ、幹部を水で冷やすことに成功したわけだが、そんなことは関係なしに指は膨れ上がり、なんだか青黒く変色し、とりあえずシップを貼って今に至るというわけだ。調べた限りでは、ただの突き指だと思って油断してはいけないらしい。場合によっては骨折している可能性もあるとか。

 骨折は紳士だ。

 昔から思っていた。骨折経験のある人というのは世の中に案外多いらしく、小学生だった時のクラスメイトにも松葉杖をついて学校に来ている人がいた。その姿、実に紳士であった。なにせ、杖である。ステッキである。ステッキというのは、実に紳士ではあるまいか。私は昔から英国の上流階級の生活に憧れる貴族的精神の持ち主だったので、とてもうらやましく思った。しかし、今の日本でステッキはあまりにも浮きすぎる。老人か盲人ならともかく、全身健康体の小学生がステッキを学校に持ってきたら冷ややかな視線を浴びせられてしまうだろう。骨折さえしていれば、そんなことにはならない。ならばしようか、とも思ったのだが、さすがに痛そうだ。痛いのは嫌だ。

 幸か不幸か、私はその後も骨折をせず松葉杖を持つ機会にも巡り合わなかった。それでも、あの頃の松葉杖に対する憧れは、いまだに私の心にくすぶっている。右手の小指にはシップが巻かれている。

 もし、この指が骨折していたら、私も紳士になれるのだろうか。
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by rei_ayakawa | 2008-11-27 22:18 | 日々