写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

飛行奇談

飛行場には夕焼けが訪れる。

Aさんは夕焼け色の世界で佇んでいる。赤という表現は真理から乖離している。

「彼女は誰を待っているんですか?」

僕はBさんに聞いてみた。

「AさんはCくんを待っているのさ」

話を聞くと、AさんとCさんは小学校を卒業するとともに離れ離れになってしまったらしい。その後二人は結婚したが、相変わらず離れ離れのままだった。今日、ようやく20年ぶりの再会を果たすことができるのだそうだ。

時を越えた繊維のストーリー。今日が彼女にとってそのように大切な日だったとは。

「それにしても、ずっと会っていないのによく結婚できましたね」
「どういう経緯でそうなったのかは俺にも分からん。男女の仲は不思議なものさ」
「男女の、中?」

確かに不思議だなぁ、と思った。

ぼーっと空を見つめていると、やがて雲の切れ間に機影が出現した。飛行機は見る見るうちに下降し、着地した場所はAさんからおよそ東京ドーム一個分の距離。そのまま鬼気迫るヘッドスライディングで爆発炎上した。

「セーフですかね?」
「いや、アウトじゃねぇの?」
「微妙なタイミングですよね。審判の判定はどうでしょうか」

炎上する残骸からはい出してくる影があった。Cさんだ。AさんはCさんの姿を確認すると、両手を拡げて駆け寄り(あの腕の形はセーフだ)そのまま抱きついた。Cさんはそれに応えるようにAさんの腰に手をまわし、口づけをする。

「あー、いいシーンですね。僕、涙出てきちゃいそうですよ」
「よかったな。ナイスガッツだった」

なにせ20年の月日に遮られていた夫婦なのだ。是非とも、これからは幸せに二人で暮らしてもらいたい。二人の愛情とCさんの白血球の働きが十分であれば、それも可能であろう。

二人の姿が救急車に吸い込まれた後、Bさんに声をかけた。

「僕たちはどうしましょうか?」
「そうだなぁ、この辺にいい居酒屋があるんだ。せっかくだから酔っていこう」
「いいですね」

僕はポップコーンの空箱をごみ箱に捨てて、先を行くBさんの後を追った。
[PR]
by rei_ayakawa | 2007-08-31 14:43 | 空想