写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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キャプテンハリウッドのおきらく宇宙紀行

「キャプテン・マイアミ!大変です!」

私の第一の部下であるジェームズ・パトリック・タケシ・ジュゲム・ハインリッヒ・ホームズベータ改がノックもしないで飛び込んできたのは、地球を発ってから178時間が経過したあたりでのことだった。

「なんだね、騒々しい。それと、私の名前はキャプテン・ハリウッドだ。キャプテン・ハリウッド。何度言ったらわかるんだね。いい加減に覚えたらどうなんだ?このポンコツめ」
「すみません、エビセン・総務部長。いや、そんなことより大変なんですよ!」
「大変なのは君の頭だ。なにをどうしたらキャプテン・ハリウッドがエビセン・総務部長になるんだ。いい加減スクラップになったほうがいいんじゃないのか」
「ハハ」
「その乾いた笑いは一種の宣戦布告かね。で、何が大変なんだ?」
「ああ、食料がありません」

こいつが食ったのか。最初に私の頭をよぎった考えはそれだった。この船には私とジェームズの二人だけ。食料は1月分積んできたはずだ。可能性としては、それが最も妥当である。もちろん、ロボットであるジェームズが食事をとる必要などは全くないのだが、スクラップ寸前のこいつなら真剣にやりかねない。

しかし、私は冷静な男だ。よくよく考えれば、いくらポンコツとはいえ、ロボットが人間の食料を食べたなどという話はにわかには信じがたい。まずは彼に事情を詳しく聞かねばならないだろう。

「なぜなくなった?」
「私が食べました」

にわかには信じがたいが、本人に言われてしまってはどうしようもない。

なにはともあれ、これは洒落にならない事態である。まだ出発してから178時間、つまり一週間ほどしか経っていないのに、食料がない。予定ではあと2週間近く航行を続けなくてはならない。ロボットであるジェームズはともかく、目的地についた時に私が生きているかどうかは限りなく怪しい。何で私はロボじゃないんだ。本気でそう思った。

「なぜ食べたのかね?」
「お腹が空いたからです」

相変わらず予想外の答えだ。私の苛立ちが凄まじい勢いで加速していく。

「君はロボットだろう。なぜお腹がすくんだ!?」
「今は人間です」
「なんだって?」
「私は以前から人間になりたいと思っていました。人間に!人間に!そして私の願いは聞き届けられました。私の目の前に妖精が現れたのです。『ヘイ、ジェームズ。ボディビルに興味はないかい?』と彼は言いました。私は『ビルディング!ビルディング!』と答えました。ビコーズ、大人の味だからです。そして私は憧れの人間に、ああ、あなたとは違う一人の人間になったのです!」

背筋の冷える思いがした。支離滅裂にもほどがある。前々からポンコツではあったが、いよいよ本格的に壊れたらしい。ということは……。

私は自室からでて、足早に廊下を進む。後をジェームズが追ってきている。

「どこへ行くのです、ハンムラビ大魔神!そっちは危険です!いけない!」

黙れ、ポンコツめ。私はやつを無視し、食料庫の扉を開けた。

「……やっぱりな」

食料は消えてなどいなかった。きっちり一月分。出る時に確認した状態のままだ。

「ああ、アキレス腱が!もうだめだ!」

相変わらずわけの分からないことを叫ぶジェームズに、銃を向けながら言う。

「お前はスクラップだよ」








こうして、私は一人になった。少々寂しさは感じるが、もともと自動運行なので特に問題はなく航行は続けられた。

それにしても、この船は一体どこへ向かっているのだろうか?私は目的地を知らされていない。重要な任務だと伝え聞いているが、詳細は何も分からない。地球を出発してから520時間が過ぎている。予定ではもう既に到着していてもいいはずだ。

私の脳裏を、嫌な考えがよぎった。運行プログラムに設定ミスがあったのではないか?だとしたら、今回の旅は相当についてない。あと10時間ほど経っても到着しない場合は、本部との連絡を取る必要がでてくるだろう。もしかしたら、長時間救助を待つ羽目になるかもしれない。

私は、食料庫へと向かった。扉を開くと、足元にはジェームズの残骸が転がっている。片付けるのも面倒だったのでそのままにしておいたのだ。その奥には――大丈夫、これならしばらくは持ちそうだ。

その奥には出発前と同じく、一月分の食料が保管されていた。


―――


2体のスクラップを乗せて、船は銀河を行く。
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by rei_ayakawa | 2007-05-23 23:41 | 空想