写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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人生ブレーンバスター(6)

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「結局、あの人はなにをあそこまで憎んでたんだろうね」

病院からの帰り道、相変わらずくっついてくる全裸男に話を振ってみた。彼に分かるはずもないのだけれど。

「気になるのかい?」
「そりゃ……気にならない、って言ったら嘘になるかな」

まだずきずきと痛む額を抑えながら言った。彼は考え込む風でもなく、泰然としている。やがて、ぽつりと呟いた。

「人は常に何かに縛られている」

声の調子が、いつもと違う。おどけた様子が感じられなかった。

「自分という存在の全てを捨ててでも、彼女にはこの世界を憎む理由があった。君が絵里ちゃんを守ろうとしたことに、理由があったようにね。それが全てさ。その中身は大して重要ではない。この世界は、彼女に憎まれる価値があったんだ。それだけだ」

言い捨てた彼は、どこか寂しげに見えた。その目は、ここではない、別の場所を見ているように感じた。

「ねぇ、俊介さん」

少し後ろめたさを感じつつも、疑問に思ったことをそのまま口に出す。

「俊介さんは自殺したんだよね」
「そうだよ」
「理由、聞いていい?」

彼は少しためらうように口に手をやり、一瞬間を置いて、囁くように言った。

「タコが入ってなかったんだ……」
「へ?」

我ながら、とても間抜けな声を出していたと思う。

「私はその日、仕事帰りにたこ焼きが食べたくなって、1舟買って家に持ち帰ったんだ。食べてみると、ああ、なんてことだ!タコが入ってないんだ!しかも、10個中10個に。全部かよ!あまりの悲しみに、そのまま首をくくってしまったというわけさ」

いや、嘘だろ……。当たり前のようにそう思ったけど、口には出さないでおいた。

「その死に方は歴史に残るね」
「だろ?我ながら凄い理由だとは思うよ。さすが私だ。かっこいい」

誇らしげに親指を立てた。ついつい笑ってしまう。バカみたい。

私は、彼が見た目よりずっと繊細な人間であることを感じ取り始めていた。
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by rei_ayakawa | 2007-02-19 21:19 | 人生プロレス技シリーズ