写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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人生ブレーンバスター(1)

前作





私には死んだ人間が見える。

いわゆる『霊感』というものが人並みを場外ホームランで越えるほど強いらしく、子供の頃から色々と見たくないモノが見えてしまっていた。もちろん、そんなことを人に言っても変な目で見られるだけだし、見えるだけで干渉は出来ないから「悪霊退散!」とかそういうこともできない。だったら、いっそのこと見えない方が気楽に生きられると思う。この力は私の人生において邪魔なだけだ。前からそう思ってはいたのだけれど。

「おいおい、あれ見ろよ。なんで友達同士でファミレスに来てまでケータイカチカチいじっているんだ、彼女たちは?私にはわからんね。全然わからん。理解しがたいこと山の如しだよ。その点、君は常識的だ。たまに友達とメールのやりとりをするくらいだよな。彼氏とかは作らないのか?まぁ、君の容貌は決して優れているというわけではないが、中の下くらいの水準はマークしていると思うよ。大丈夫さ!」

うるさい。

隣を歩きながらまくし立てるその男に、全身全霊の敵意をこめた視線を送る。

「余計なお世話にもほどがあるよ。少しは黙っていられないの?」
「沈黙は金なり!ということか。ふん。しかし、せっかくこうして下校路をともに歩いているわけだ。気さくな会話を通じて交流を深めようとする私の意図を少しは汲んだらどうなんだい?」
「嫌。死んだ人間と交流を深めることに意味があるとも思えないし」

視線を前に戻して、歩き続けた。

こいつと会ったのは三日前。学校からの帰り道にたまたま道の端で座り込んでいるのを見かけた。気づかれちゃいけないと思ってすぐに目を逸らしたのだけれど、タイミングが悪かった。彼は私のそばに近付いてきてささやいた。

「しばらく君に憑いて回らせてもらうことにするよ」

記念すべき人生初取り憑かれだったけど、嬉しくもなんともないので赤飯は炊かなかった。

取り憑かれた事でどんな被害があるかと不安になったけど、自称『紳士』な彼は、お風呂やトイレの時はきちんと外で待っているし、これといって私に危害を加えることもない。ただ、うるさい。人前でもどんどん話を振ってくる。最初のうちは少し怯えていたこともあって徹底無視だったけど、あんまりしつこいので、誰もいないところでならたまに受け答えをするようになった。なんだか、術中にはまっているような気はする。

さらに悪いことに、

「冷たいね。君は死者の尊厳は認めないとでも言うのか?」
「生きていても、あなたみたいな露出狂の尊厳は認めない」

彼は常に全裸だ。

「露出狂とは酷いな!別に私だってこの格好でいたくているわけじゃないんだぜ?ただ、死ぬ時くらい生まれたままの格好がいいなーと思ってしまったのが間違いだったと今なら認識できるよ。いやはや、まさか死んだ時の姿で固定されてしまうとは……」

一応、彼は自殺者らしい。自殺なんかするタイプにはまるで見えないが、そういうことらしい。その辺は深く突っ込んで聞いてない。私には関係のないことだ。それより、うかつに彼の下半身に視線をやれないことのほうが大問題だ。

「自分で死んだなら、いつまでもこの世にしがみついてないで早く成仏したらどうなの?」
「それが出来るようならとっくにしているよ。自殺したやつは成仏できないってのはありゃ本当だ。どうやったら成仏できるのか、こっちが教えて欲しいさ。ああ、こんなかわいそうな私の暇つぶしに是非とも付き合ってくれたまえ」
「嫌」

考える前に口にでるっていうのは、こういうことなんだと思った。

「そんなの自業自得じゃない。私には関係ないよ」
「あらら、ひっどいなぁ。いいじゃん。案外これでもそれなりに役に立つかもよ?たとえば……」

そこまで言うと私の耳元に顔を寄せて、ささやいた。

「君のクラスメートの名前、木崎絵里だったかな?」

足を止めた。

私が向き直る前に、彼は身を引いて距離を取り、片眉を少し吊り上げた。

「あなた、やっぱり……」
「はっ!もちろん。君に見えて私に見えないはずがあるか?なかなか厄介なのに憑かれているみたいだな、あの子は」

確かに木崎絵里は『憑かれて』いる。今日、体調を崩し気味だという彼女の背後には、青白い肌と血走った目をした女性の姿が見えた。どう考えても好意的な霊ではなさそうだ。今までの私の経験から言っても、おそらく絵里は長くない。おしゃべりな彼がこの件に関してはまるで口に出さなかったから、てっきり彼は気が付いていないものだと思っていた。

「君は彼女となかなか親しくしているようだし、助けてあげたいと思わないか?」
「できるの?」

返ってきた言葉は、想像を絶する適当さに彩られていた。

「いやぁ、同じ霊同士だし腕力でどうにかなるんじゃない?私はこれでも結構鍛えてた方だからね。女の人には負けないでしょ。多分!」
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by rei_ayakawa | 2007-02-05 21:09 | 人生プロレス技シリーズ