写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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『脱獄不可能』

第1場面

「野菜炒めは何があろうともおやつに入らない」という結論で私たちの論戦には終止符が打たれ、彼は新たな話題を持ち出した。

「お前『脱獄不可能』って知ってるか?」
「……言わんとしているところがいまいち判然としないね」
「とある刑務所の俗称だ。正式名称はわからないが、とにかくその刑務所はみんなから『脱獄不可能』と呼ばれている」
「へぇ、つまり脱獄不可能なのか」
「なんせ、『脱獄不可能』だからな。その刑務所に収監されているやつの中に、とんでもない大物がいるんだ。誰だかわかるか?」
「イヤ、全く」
「宇宙大帝だ」
「マジで?」
「超マジ」
「宇宙大帝がどうして刑務所なんかに?」
「さぁな……俺にもその辺はわからんよ」

私はこの話に非常に興味をそそられたが、彼もそれ以上の情報を持っていなかった。早々に話題は「くだらないことを考えている時ほど真剣な顔つきになっているのは何故か」ということにシフトした。


第2場面

彼が狼狽した様子で新聞紙を片手に私の部屋に飛び込んできたのは、翌年の春のことだった。

「おい!大変だ!」
「どーした?」
「宇宙大帝が『脱獄不可能』から脱獄したらしいぞ!」
「なんだって!?」

彼から新聞紙を奪い取り、問題の記事に目を通す。そこでは確かに、宇宙大帝が『脱獄不可能』から脱獄したことが報じられていた。私はふと、自分の足場がガラガラと崩れていくかのような錯覚にとらわれた。


第3場面

「信じられない……。『脱獄不可能』と呼ばれているからには脱獄不可能のはずなのに、どうやって宇宙大帝は脱獄したんだろう?」

私は額に手のひらを押し付けながら言った。未だにこれが現実だとは思えない。しかし、彼は既にいつもの冷静さを取り戻しているようであった。

「方法まではわからないが、一つだけ言えることがあるよ」
「なんだ?」
「『脱獄不可能』は脱獄可能な刑務所だったってことさ」
「『脱獄不可能』が脱獄可能だって!?『脱獄不可能』なんだから、脱獄不可能じゃなきゃいけないはずじゃないか!」

声を荒げて言うが、彼は冷静に続けた。

「『脱獄不可能』と呼ばれていたに過ぎない脱獄可能な刑務所だったんだよ」
「そんなばかなことが……まるで喜劇じゃないか!『脱獄不可能』が……脱獄可能だったなんて……」

思考が混乱している。彼はあくまで淡々としていた。

「とにかく、こんな事件が起こった以上、俺たちはあの刑務所を『脱獄不可能』と呼び続けるわけには行かなくなった。これからは『脱獄可能』と呼ぶべきだろう」
「しかし、だったら、今まであそこを『脱獄不可能』と呼び続けてきた俺たちは一体……」
「その時代に信じられていたことが、後になって否定されることなどよくあることさ。天動説を例に挙げるまでもなくね。確かに、あの刑務所は今まで『脱獄不可能』と呼ばれていた。それが真実だと誰もが思っていたからだ。しかし、今こうして状況は変わった。結局、あの刑務所は『脱獄可能』だったんだよ」
「もう、何を信じて生きていけばいいのかわからないよ……」
「信じる必要なんてない。信じたふりをしていればいいのさ。世界はいつだってあやふやな物だ」

私はしばらくうなだれていた。どの程度の時間そうしていたのかはわからない。そして、覚悟を決めて宣言した。

「そうだな……わかった。オレは『宇宙大帝の脱獄を真っ赤な嘘だと信じたふり』をすることにするよ。俺の中で、『脱獄不可能』はいつまでも『脱獄不可能』なんだ!」

彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに頬を緩めた。

「それもありか。ま、いいんでないの?」


第4場面

彼が再び私の部屋に飛び込んできたのは、その2日後のことだった。

「おい、大変だ!」
「どーした?」
「宇宙大帝は『脱獄可能』を脱獄してなかったんだ!誤報だったんだよ!」
「なんだって!?」
「『脱獄可能』を脱獄したのは宇宙係長だ!」
「やったー!信じたふりをした甲斐があったぜ!」

私は、心の底から喜んだ。


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 審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
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 企画終了条件は
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 参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。

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 企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/

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この文章は■◇■ 第10回 トラバでボケましょう 開催! ■◇■ 参加作品です。

お題はこちら。
「脱獄不可能」と呼ばれる警戒厳重な刑務所。
その牢獄に長年繋がれている謎の人物の正体とは!?

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by rei_ayakawa | 2006-11-26 00:51 | 空想