写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

CLAYMAN

やあ、僕の名前は佐藤翔太。
粘土でできた人形さ。
世界の真実を知るために、旅を続けているんだよ。


悲しみの町

今日もどこかで誰かの嗚咽が漏れている。
それがここ、悲しみの町。
「何がそんなに悲しいの?」
僕は彼女に聞いてみたのさ。

「別になんでもないのよ。なんでもないんだけど、どこから話したらいいのかしら。そう、あれは一年前のことよ。パチンコで負けに負けて落ち込む私に、彼はやさしく声をかけてくれたの。『アホか』って。もう、その時にわかったわ。こいつは私に惚れてるって。私も前から彼だったら自分にふさわしいって感じてたから、それはそれで悪くないなって思ったの。でも、そこから先に何も進展しないのね。なんか変だなーって思って『好きなら好きって言ってよ!』って問い詰めたら、『は?』ですって。ひどすぎるわよね。私、騙されてたのよ!彼にとって、私とのことは遊びに過ぎなかったんだわ。あんな身勝手なことして、彼は何も感じないのかしら。ああ、でも、でもね。あんな最低な男だとわかってても、まだ割り切れない自分がいるの。私どうしたらいいのかしら?およよよよ……」

僕には、彼女の言っていることがよくわからなかった。
どう考えても、この話からその彼が最低だという結論が導き出せなかったんだ。
僕は疑問に思って聞いてみた。

「それはただ、あなたが勘違いをしていただけじゃないの?」

そしたら彼女は、急に冷たい目つきになってこう答えた。

「土くれのあなたには、私の気持ちなんてわからないのよ」

そうなのかもしれない、と僕は思った。


喜びの町

今日もどこかで誰かが心を浮き立たせている。
それがここ、喜びの町。
「何がそんなに嬉しいの?」
僕は彼に聞いてみたのさ。

「聞きたい?聞きたい?やっぱり聞きたいよなぁ。それはもう素晴らしいことがあったのさ。話せば長くなるんだけどね……」

「じゃ、いいや」

僕はその場を立ち去ろうとした。

「HEY!ストップ!ストッピング・セレナーデ!全く、君はせっかちさんだなぁ。本当はあんまり長くないんだから、ちゃんと聞いていってくれよ」

「はぁ。それならどうぞ」

「じゃ、仕切りなおすよ。それはもう素晴らしいことがあったのさ。話せば長くなるんだけどね。なんと、宝くじで1千万円当たったんだよ!」

「そうなんだ。おめでとう」

「……それだけ?」

「え?」

「違うだろ?ここは明らかに『全然長くないじゃないかー!』って突っ込むべきところだろ。君は本当になんというか、粋な会話センスのかけらもないというか、もうダメダメだよ。ダメダメ」

「ダメダメかな」

「うん、凄くダメダメ。まぁ、君は粘土人形だからね。その辺分からなくてもしかたがないかもしれないけど」

「そうなのかもしれないね」

僕はその場を立ち去った。


怒りの町

今日もどこかで誰かが不満を募らせている。
それがここ、怒りの町。
「何でそんなに怒っているの?」
僕は彼に聞いてみたのさ。

「それがなぁ。俺の知り合いにビデオ貸してたんだけどよ。そいつが見事に上書きしてくれやがってな。怒髪天を突きかねない状況だったんだけど、あいつもそこそこ落ち込んでたみたいだし、俺も大人だからさ。『まぁ、気にするな』って言ってやったわけ。そしたら、あいつの反応が『わかった、気にしないよ!それじゃね!』ばっかやろおおおお!お前そうじゃないだろう、少しは気にしやがれこのクソが!というわけだ。わかった?」

あまりわからなかった。

「だって、あなたは『気にするな』って言ったんでしょ?そう言われて気にしなかったことの、なにがいけないの?」

彼は落胆したかのように言った。

「まぁ、土人形のお前からすればそうだろうな。お前にゃわからないだろうが、人間様の世界はもっと複雑なんだよ。とっとと行きな」

きっと、そういうことなのだろう。


出会いの町

一人の女の子が、通りの真ん中にたたずんでいた。
僕と同じように、粘土で出来ている体。
「こんなところで、何をしているの?」
僕は彼女に聞いてみた。

「あなたこそ、なにをしているの?」

無表情で答える粘土人形。
僕は黙って手を差し出す。
何故そうしたのかはわからなかった。

彼女は僕の手を握り返す。
冷たい手だった。

「この町から出よう」

彼女は、こくりと頷いた。


うたかたの町

僕たちは走る。
何かにせかされるように。
天からは雨が降り注ぐ。

町を出るための門は、閉じられているだろう。
そんなことはわかっている。
でも、走らずにはいられなかった。

雨が降り注ぐ。
僕たちは溶けていく。
やがて、この町と一体になるだろう。
それでもただ、今は走った。

ここは悲しみと、喜びと、怒りと、出会いと、うたかたと、そして人生の町。
[PR]
by rei_ayakawa | 2006-10-03 22:24 | 空想