旅
2006年 09月 21日
翼
僕は、川沿いの道を歩いていた。
日差しが照る中、歩いていた。
気温は高いが、風は涼しい。
本当にいい天気だ。
ひっそりと道端に咲く花が、風に揺られて踊っている。
前を見ると、川原に少女が座っているのが見えた。
長い黒髪が印象的な子だった。
まだ中学生くらいだろうか。
白い綺麗な肌、すらりと細い手足。
お人形のような雰囲気の女の子だった。
僕は興味を持って、ふらふらと近付く。
彼女はこちらを振り向くと、にこりと笑って声をかけた。
「翼、いりませんか?」
「いや、別に」
なんかそういう気分だった。
彼女は明らかに不服そうだった。
「そんなつまんないこと言わないでくださいよー。おもしろくないなぁ」
「そんなこと言われたってねぇ……」
「うんって言ってくださいよ。今なら洗剤もつけるからさぁ」
「え、ほんと?どうしようかな」
僕は真剣に考え込んだ。
洗剤が欲しかった。
「うん、わかった。翼、貰おうかな」
「いぇい。話わかりますね、お客さん!」
彼女はパチンと指を鳴らした。
すると、僕の背中から突然、大きな白い翼が生えた。
「これであなたは空を飛べます。飛行機には気をつけてね」
「よーし、飛行機に気をつけるぞ!」
僕は翼を大きく広げ、大空へと舞い上がった。
地面がみるみるうちにはなれていく。
体が空に吸い込まれそうな気分だった。
鳥の群れといっしょに、遊覧飛行。
風が気持ちいい。
周りを飛ぶ鳥たちは、僕に見向きもしなかった。
所詮、僕は鳥ではないということか。
眼下に広がる町並みは、いつもとどこか違うように感じられた。
その向こうに広がる海。
僕は水平線を目指して飛んでいった。
空は青いようで白くもある。
海面には太陽光が反射する。
まるで、ダイヤモンドのよう。
キラキラと輝いている。
しばらく海上を飛行しているうちに、僕はまずいことに気がついた。
「疲れた」
僕は残念ながら飛ぶのには慣れていなかった。
どこかで休みたくなったが、周りには見渡す限りの海、海、海。
羽を休める場所がない。
僕は力尽きて、海にめがけてよろよろと落ちていった。
太陽は沈みかけていた。
抵抗
僕は海に浮かんでいた。
空はどんよりと暗い灰色。
アホウドリが宙を舞っている。
僕は手を伸ばそうとした。
でも、僕は沈んでいった。
無関心なアホウドリ。
僕は沈んでいく。
魚の群れも目を合わせてくれない。
僕は彼らに声をかけてみた。
「ねぇ、僕はこれからどうなるの?」
魚たちは皆、こちらを見ようともしない。
僕はなんか、妙に悔しくなった。
「あ、100円落ちてる!」
魚たちは相変わらず見向きもしない。
僕はなんか、無性に腹が立ってきた。
こいつらには100円の大切さがわかっていないんだ。
100円を笑うものは100円に泣くんだ。
貴様らも100円に泣き濡れるがいいさ、凡人どもめ!
あ、違う。
凡魚どもめ!
僕はさらに沈んでいった。
無関心な魚の群れ。
僕はついに、海のそこまで沈んでしまった。
そしたら、今度は人魚さんが近付いてきた。
でも 僕のことは見ていない。
ここまでスルーされ続けるとむしろすがすがしい気もするけど やっぱりむかつくので抵抗を試みた。
「へーい、そこのお嬢さん。僕と一緒にお茶しない?」
相変わらず彼女は見向きもしない。
「志村ー!後ろ、後ろ!」
反応してくれない。
志村じゃないみたいだ。
「ねー、助けてよー。こんな所に沈みっぱなしなんて嫌だよー」
泣き落としに入ってみた。
でも 彼女は全然反応してくれない。
僕はもう諦めてしまった。
全身から力が抜ける。
虚脱状態。
僕の体が少しずつ浮かび上がり始めた。
安息
僕はぷかぷかと海面に浮かんでいた。
無関心なアホウドリ。
僕は、川沿いの道を歩いていた。
日差しが照る中、歩いていた。
気温は高いが、風は涼しい。
本当にいい天気だ。
ひっそりと道端に咲く花が、風に揺られて踊っている。
前を見ると、川原に少女が座っているのが見えた。
長い黒髪が印象的な子だった。
まだ中学生くらいだろうか。
白い綺麗な肌、すらりと細い手足。
お人形のような雰囲気の女の子だった。
僕は興味を持って、ふらふらと近付く。
彼女はこちらを振り向くと、にこりと笑って声をかけた。
「翼、いりませんか?」
「いや、別に」
なんかそういう気分だった。
彼女は明らかに不服そうだった。
「そんなつまんないこと言わないでくださいよー。おもしろくないなぁ」
「そんなこと言われたってねぇ……」
「うんって言ってくださいよ。今なら洗剤もつけるからさぁ」
「え、ほんと?どうしようかな」
僕は真剣に考え込んだ。
洗剤が欲しかった。
「うん、わかった。翼、貰おうかな」
「いぇい。話わかりますね、お客さん!」
彼女はパチンと指を鳴らした。
すると、僕の背中から突然、大きな白い翼が生えた。
「これであなたは空を飛べます。飛行機には気をつけてね」
「よーし、飛行機に気をつけるぞ!」
僕は翼を大きく広げ、大空へと舞い上がった。
地面がみるみるうちにはなれていく。
体が空に吸い込まれそうな気分だった。
鳥の群れといっしょに、遊覧飛行。
風が気持ちいい。
周りを飛ぶ鳥たちは、僕に見向きもしなかった。
所詮、僕は鳥ではないということか。
眼下に広がる町並みは、いつもとどこか違うように感じられた。
その向こうに広がる海。
僕は水平線を目指して飛んでいった。
空は青いようで白くもある。
海面には太陽光が反射する。
まるで、ダイヤモンドのよう。
キラキラと輝いている。
しばらく海上を飛行しているうちに、僕はまずいことに気がついた。
「疲れた」
僕は残念ながら飛ぶのには慣れていなかった。
どこかで休みたくなったが、周りには見渡す限りの海、海、海。
羽を休める場所がない。
僕は力尽きて、海にめがけてよろよろと落ちていった。
太陽は沈みかけていた。
抵抗
僕は海に浮かんでいた。
空はどんよりと暗い灰色。
アホウドリが宙を舞っている。
僕は手を伸ばそうとした。
でも、僕は沈んでいった。
無関心なアホウドリ。
僕は沈んでいく。
魚の群れも目を合わせてくれない。
僕は彼らに声をかけてみた。
「ねぇ、僕はこれからどうなるの?」
魚たちは皆、こちらを見ようともしない。
僕はなんか、妙に悔しくなった。
「あ、100円落ちてる!」
魚たちは相変わらず見向きもしない。
僕はなんか、無性に腹が立ってきた。
こいつらには100円の大切さがわかっていないんだ。
100円を笑うものは100円に泣くんだ。
貴様らも100円に泣き濡れるがいいさ、凡人どもめ!
あ、違う。
凡魚どもめ!
僕はさらに沈んでいった。
無関心な魚の群れ。
僕はついに、海のそこまで沈んでしまった。
そしたら、今度は人魚さんが近付いてきた。
でも 僕のことは見ていない。
ここまでスルーされ続けるとむしろすがすがしい気もするけど やっぱりむかつくので抵抗を試みた。
「へーい、そこのお嬢さん。僕と一緒にお茶しない?」
相変わらず彼女は見向きもしない。
「志村ー!後ろ、後ろ!」
反応してくれない。
志村じゃないみたいだ。
「ねー、助けてよー。こんな所に沈みっぱなしなんて嫌だよー」
泣き落としに入ってみた。
でも 彼女は全然反応してくれない。
僕はもう諦めてしまった。
全身から力が抜ける。
虚脱状態。
僕の体が少しずつ浮かび上がり始めた。
安息
僕はぷかぷかと海面に浮かんでいた。
無関心なアホウドリ。
by rei_ayakawa
| 2006-09-21 22:14
| 空想