写真の子は恥ずかしがりやさんなので、これ以上出てきてくれません。


by rei_ayakawa
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私は雨の降りしきる中、なにをすることもなく道の真ん中に立ち尽くしていた。



傘の骨をつたって水滴が滴り落ちる。これは天の涙。そして、俺の涙だ。そんなことを漠然と考えていた。

「どうかしたのですか?」

誰かが私に声をかけた。声のした方に顔を向けると、花屋の店員が外に出てきて心配そうにこちらを見つめている。優しそうな顔立ちをした青年だ。私は答えた。

「いやね……。世の中の理不尽さに疲れ果ててしまったのですよ」

ああ、そうだ。私は疲れ果ててしまった。この短い旅路の中で、世の中の悪意を一身に受けてしまった気分だ。もう何を考えることもしたくない。ただ、ここに立って虚無感に浸り続けていたいのだ。

「でも……さっきから、20分近く立ちっぱなしじゃないですか。このままじゃ、風邪を引いてしまいますよ。中に入りませんか?」

私は答えた。

「ありがとう。でも、放っておいてくれないか。私はこうしていたいんだ」

それが今の私の偽らざる心境だった。私は一人になりたかったのだ。しかし、彼は続けた。

「そんなこと言われても、放っておくわけにはいきませんよ。雨も強くなってきてます。中に入りましょう」

うーん。

確かにそれはそうだ。彼の言い分も分かる。しかし、なんだろう。この妙な苛立ちは……。

「傘があるから大丈夫です。私を一人にさせてください」

彼は答えた。

「でも、風が強くて結構濡れてるじゃないですか。タオルで拭かないと……」

「大丈夫ですよ」

「いいから、とりあえず中に入りましょう」

そういうと彼は駆け寄ってきて、傘を持っていない私の左手を掴んだ。その時、私の中で強烈な変化が起こった。何かがはじけたのだ。

「いらんっちゅーとんじゃあ!」

私は傘をほっぽりだし、開いた右手の指でVサインを作って青年の鼻の穴へと突っ込んだ。

「ほがっ!」

そのまま一気に振りぬける。青年は吹っ飛び、うめき声を上げながら鼻を押さえてうずくまった。

はっとした。

私は天を見上げた。そうか、私も理不尽だったのだ。ならば、世界が理不尽なのも当然のことだ。そう気がついた瞬間、体中に活力がみなぎってきた。ああ、私はまだやれる。やれるんだよ。

雨に体が打たれても、もう気にはならなかった。そして私は再び、当てもなくぶらぶらと道を歩き始めた。
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by rei_ayakawa | 2006-04-17 20:48 | 空想